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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (六十) 

2021年01月19日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「正三、お父さんに謝りなさい。お父さんに逆らうなんて、どうかしてますよ。
以前のお前は、聞き分けの良い子だったのに」
 二人の口論を聞いていた母親が、慌てて間に入った。
「タカ! お前が甘やかすから、こんな口答えをするんだ! 躾が、悪い!」
「お父さん! お母さんを責めるのは、筋違いです。
世の中が変わったんです。現人神であらせられた天皇陛下が、人間宣言をされるような時代なんですから」
「な、何ということを! お上が、本心からそのような事を仰られる筈がない。
進駐軍に強要されたのだ。恐れ多いことだ、まったく。
もう良い! とに角、わしは許さんからな。
それにお前は、もうすぐ東京に行く身だ。
あんな女のことなど、すぐに忘れてしまうじゃろうて」

 吐き捨てるように言い残すと、正三の声に耳を貸すことなく立ち上がった。
父親が立ち去った後、母親は正三の前に居住まいを正して座った。
「ねえ、正三。一体、どうしたの? 
小夜子さんとお付き合いを始めてからというもの、すっかり変わっちまいましたねえ。
お夕飯の時間になっても、帰ってこないし。
たまに共にしても、ひと言も話すでもないし。
いいですか、正三。お前は、逓信省の官吏様になるんです。
お父さまの、ご自慢なのですよ。
恐れ多くも、お上のお膝元に行くのです。お国の為に、粉骨砕身働くのです。
そんなあなたが、あんな性悪女に関わっていて、どうするのですか!」

「お母さんまで、そんなことを。
小夜子さんを貶めるような言葉は、控えてください。
あの人は、そんな女性ではありません
。確かに、常軌を逸した行動で驚かされることばかりですが、素晴らしい女性です。
何より向学心に燃えています。
ここでは学べない、英会話の勉強をしたいと、言っているんです」

「だまんなさい、正三!まっ、まさか、あなた……。
だめですよ、目が届かないからといって、ふしだらなことは。
権藤の伯父さまの、お声掛かりで入省させて頂けるのですからね。
お顔を潰すようなことは、許しませんよ」
 誇らしげに語る正三に、母親は言葉をかぶせた。
「大丈夫ですよ、お母さん。僕たちは、清らかな交際ですから。
それに彼女の東京行きは、僕とは関係ありませんから。
心配性だなあ、相変わらず」
 正三は、笑いながら答えた。
その実、心の奥底を見透かされるのではないか、という不安も過ぎった。

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