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ほっこり
南十字星の恋A〜改訂版
2020年05月20日
テーマ:小咄
南十字星の恋A (5/12・@の続き)
水平線の彼方にある雲が茜色に染まり始めた頃、すでにその日の漁は始まっていた。
多くの手漕ぎのカヌーが遠浅の沖合いに集まっている。
波打ち際には白い波が寄せては返す。
遠浅のおだやかな波はどこまでもゆったりとしている。
のんびりとした南洋の朝だが、浜辺から遠謀していても、男達の荒い息がひしひしと伝わってくる。
カヌーのまわりだけには大きな水しぶきが見て取れるからだ。
やがて、太陽が頭を少し出すと珊瑚でできた島々の山や崖、岩肌が赤焼けしてきて神々しくその姿を変える。
浜辺にカレナの姿があった。
彼女はひとり岩場の大きな岩の上に立ち、日の出の方向を眺めていた。その視線の先、東南東の方向にはポロ島が浮かんでいる。
そう、あの島〜ポロ島には恋しいオルトがいる。
やがて、太陽が昇りきるとそれまで朱色がかって見えたポロ島も青くその姿を変えた。
近くに見えるのに遠いその存在に、カレナはもどかしさを感じてはため息ばかり。
オルトがポロ島に渡ってから早2週間が過ぎようとしていた。
毎日、早朝からこれの繰り返しがカレナの日課となった。
でも、毎日、日の入り後にはオルトが約束通り、海岸で焚き火をして合図を送ってくれる。
それが唯一の楽しみなのだが、若いカレナにとっては我慢の限界だった。
一刻も早くオルトに逢いたい。
この乙女心をもはや抑えることはできなくなっていた。
自力でカヌーを漕いでポロ島に渡りオルトに逢う決意を既にしていた。とは言え、カレナは無謀を冒してまで軽はずみな行動をするような娘ではない。
実はこのハルム島が属するソラス諸島には古い言い伝えがある。
カレナが幼い頃だったが、子供達が集まって古老を取り囲み、その話を聞かされたことがある。皆、目を輝かせ神妙にその話に聞き入ったものだった。今でもはっきりとその昔話を覚えている。
その話とはこうだ。
今でこそ、皆、仲良しで平和な島の暮らしだが、かつては島と島が争っていた時期があった。
ハルム島とポロ島の間でも漁に関してのいざこざや縄張り争い、首長の跡目相続や婚姻関係などで争いが続いていた。
そんな険悪な関係の頃、ハルム島の娘とポロ島の青年が恋仲となったが、親はもちろん親族一同から敵対した島の人間との付き合いは堅く禁止されていた。
青年はある日、秘密裏に島を抜け出し、決死の覚悟で娘の元へと忍び、ある約束をして、再び島へと戻った。
翌日の深夜、島中が寝静まった頃、二人はそれぞれカヌーを漕いで沖合いに向かい、ほぼ中間地点で逢ったのである。
それからと言うもの、毎夜、二人の逢瀬は続いた。
波は静かで満天の星達だけがこの二人を見守っていた。
しかし、ある晩海は大荒れとなり、カヌーは流されこの二人は海中深くへと沈んでいった。
このことは周知の事実となり、両島の島民はそれぞれ娘と青年のことで非難をし始め、争いは更に大きくなった。
それから、しばらくしたある日のこと、多くのカヌーが漁をしている時、銀色に輝く大きな魚が2匹現れた。
普段は深海に棲み水面まであがってくることはめったにない。
このつがいの魚は和名でリュウグウノツカイと言う。
何か悪いことの前兆ではと皆は恐れた。
そして、数日後、大地震が起こり島々は津波に襲われ多くの島民が命を落とした。
島民達は思った。
あのリュウグウノツカイは若き二人の化身であり、争いばかり繰り返す我々に天罰を与えたのだと。
それからは一切の争いをやめ、平和が訪れたのであった。
島民達はそれ以降、リュウグウノツカイを敬い、万が一目撃した時には盛大な宴を催し、海の怒りを鎮めるようになった。
姿かたちからタツノオトシゴも二人の子供達として崇めるようになったのである。
〜これがその伝承話である。
この話を思い出したカレナであったが、早速行動に移した。
(続く)
♪Joni Mitchell〜The Circle Game 4:56
https://www.youtube.com/watch?v=5NEkJhBHh54&list=PLl801Z2Yiex6MIeEjvbUQg5VZgFp0VZsC
彼女の代表曲。変則チューニングでのギター演奏の名手としても有名
※ 「老人の詩」(5/13)に拍手、コメント頂きありがとうございました。この「南十字星の恋」、2年前には着想が全く無かった展開になってきました。これからどんな展開、結末になるかはいまだに不明です。今日も一気に書き上げて添削なしでアップしましたから、例によって読み返しながらおかしな箇所は修正します。ここまで、ご覧頂きありがとうございます。
※ 画像はネットから拝借。リュウグウノツカイは大きいものでは10mを超える深海魚。
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かをるさんへ
コメントありがとうございます
私の場合、このような真面目な創作話だと書く速度が鈍くなります。お笑やパロディだと結構思いつきでさらっと書けるんですけどね〜小説と呼ばれるにはあまりにも恥ずかしい妄想話です。
読まれた方があらたに映像なりをご自身のイメージで描いていただければと思います。
この続きは書きながら考えますが、もや〜っとした話の流れだけはイメージできています。
カヌーで行くしかないんですけどね・・・さて?
2020/05/23 22:27:02
カレナは?
さて、カレナは手漕ぎカヌーで島に向かうのでしょうか?
でも、>カレナは無謀を冒してまで軽はずみな行動をするような娘ではない。>とあるから、どんな手段でオルトに会いに行くのでしょう。
それにしてもぼてふりさん、想像力が豊かですね!
小説は想像力の産物ですものね。
想像力がなければ書けませんもんね。
うらやましい才能です。
2020/05/23 20:02:16
宏子さんへ
コメントありがとうございます。
話を書いている途中でリュウグウノツカイを思い出し、島に伝わる昔話を挿入してみました。
タチウオを大きくしたような銀色鮮やかな魚のようで、展示している水族館もあります。
一度、実物を見てみたいです。
続きもじっくり考えて書きます。
ご期待に沿えればと思います(^^)
2020/05/21 12:29:39
めぐりん*さんへ
コメントありがとうございます。
オルトと逢えぬ引きこもり自粛生活のカレナだったが大いに食べ密かに体を鍛えていた。
島に1軒ある観光客用のファーストフード店のカロリーこってりのピザやフライドポテトなどのイタリアンをテイクアウトし、手作りスープと一緒にペロリと完食。
ズンドコ体操、必殺踵落し、体落し、ヤシの木でのぶつかり稽古などで体をほぐしたカレナは黒光りした出っ張ったお腹の肉をたるませ紺碧の海へ飛び込んだ。
上腕二頭筋を震わせ得意の犬かきで泳いだ。
あ〜進まん・・すぐにあきらめた。
ポロ島は遠いな〜
こうなったら、しゃあない。
素潜りは下手だけど、もぐりの商売でサンゴやヤクを売ってモーターボートを買うことにしましょ。
カレナは決意を新たに毎夜、酔っ払った観光客相手に闇の商売を始めたのであった。
それから1年が経った。
そして、ついに最新式のボートを買ったのである。
船名は「酔いどれメグリン号」
そして、いよいよ今日のその時を迎えました。
いざ、出航!
果たしてその結末は・・?
乞うご期待!
2020/05/20 23:50:09
エピソード 2 !!
ぼてふりさん、こんばんは!
ロミオとジュリエットの様な
昔の悲恋の恋人たち。。
リュウグウノツカイはきっと
綺麗なお魚なんだろうな。
カレナも月夜の夜に
ポロ島に向かうのでしょうか…
ひとり舟を漕ぎ…
ロマンチックですね(*´ェ`*)ポッ
まさかカレナは、実は遠泳の名手で
長距離などものともせず、息継ぎも鮮やかな
クロールでガンガン島へ渡っていくのだ。。。
って展開はないですよね (^◇^;)
失礼しました〜笑
エピソード 3 をお待ちします。
2020/05/20 22:58:08