ほっこり

爺ちゃん婆ちゃんとボク 

2019年08月12日 ナビトモブログ記事
テーマ:小咄



お盆がやって来た

外はこの世の終わりのような暑さだ。
朝からセミの大合唱〜シャーシャーシャーと、なんとも暑苦しい鳴き声だ。そこら中に響いている。
ボクはあれを聞くだけで汗が吹き出てしまうんだ。

ベランダから裏庭を見るとヒマワリがお日様を浴びて、私たちは元気だよと空を見上げている。
早朝ラジオ体操の後、井戸水を汲んで水やりをしたばかりだ。トウキビも実が大きくなってきた。
あと、しばらくの辛抱だ。焼いて食べよう。

窓をみんな開けて、扇風機の前で寝転んでいる。
扇風機は強にして首振りさせているんだけど、時々、扇風機に向って「あ〜」と叫んでみる。ひとり遊びで笑ってしまう。声が振るえておもしろいんだ。

生暖かい風が気持ちいいのか悪いのかよくわからないけど、毎年、夏休みはこんなことをしている。
半ズボンにランニングシャツばかり着てるから、日焼けの跡がくっきりとシャツの形でついている。ちょっとだけ可笑しい。

表に車が止まった。
あの音はじいちゃんの車の音だ。聞けばすぐわかる。
迎えに来てくれた。

じいちゃんが家に入って来た。

「おい、行くぞ」

坊主頭で体格のいいじいちゃんは無口な明治生まれの男だ。意外と格好いい。若い頃は結構もてたんだそうだ。
かあちゃんがこそっと教えてくれたことがある。

「うん、待ってて」

着替えをかあちゃんが用意する。
ボクは銀玉鉄砲と玉、そして、「夏休みの友」や筆箱などをバッグに詰め込む。じいちゃん家に行っても勉強なんかしないんだが、「夏休みの友」は持っていかないとかあちゃんにしかられるから仕方ないんだ。ポーズだよ、それ位の悪知恵はあるのさ。

出発!

車の中も蒸し暑い。三角窓も開けて風を入れる。
じいちゃんに川遊びの話を得意になってした。
じいちゃんは「川では深い所に行ったらいかんよ。河童が足を引っ張るけんな」と言う。
「そげんね。えずか(恐い)ね〜」
次は気をつけよう。

やっと着いた。

「ばあちゃん、来たよ」

「○○ちゃん、よう来たね。さ〜上がりんしゃい」
ばあちゃんはニコニコして嬉しそうだ。

「暑かったろう。何か飲むね?」
「うん、冷たいジュースがよか〜。のどカラカラばい」

コップに氷を入れ、オレンジ味の粉ジュースを作ってくれた。菓子皿には甘納豆と金魚の形をした小さなお菓子、それとようかん。

「あ〜美味しか〜。ばあちゃん、もう1杯ちょうだい。♪ワタナベのジュースの素です、もう1杯〜♪」
「あんた、歌の上手かね、ははは」
嬉しそうにボクをおだてる。

「お昼ご飯ば食べたら、スイカば切っちゃろうね」

いつも、こんな感じだ。

お昼はちゃんと用意してくれてたんだ。
大好物のお稲荷さんと巻き寿司、冷麦、だし巻き玉子、煮豆、茄子と胡瓜の漬物。全部手作りだ。ばあちゃんは料理がうまい。
そして、デザートはサクランボとミカンが入った冷え冷えの寒天。
「あ〜、生きてて良かった」

おやつはお約束のスイカ。
ばあちゃんはスイカの皮の白いところを切り取って、漬物にする。これが又うまい。
「ものは大切に使わんとバチが当たるとよ」
ケチじゃないんだな。何でも始末して大切に使う。

そして、何よりも信心深い。
朝、起きたらご飯を炊いて最初に神様に水と一緒にお供えをする。そして一生懸命にお祈りをする。
昼も夜もそうだ。


(続く)


あと1回続けて書きます。
お盆休みでお子さんやお孫さんが帰って来ている方も多いでしょうね。
子供の頃の想い出を綴ってみました。


[完全版]ジャズばあちゃん・夢のセッション・アメリカ
https://www.youtube.com/watch?v=8lXviiPq4as
以前短いバージョンをご紹介して好評でした。
少し長いのでお時間無い方は後半15分過ぎにカーソルを合わせて、ライブハウスでの演奏シーンからご覧ください。
何度見ても涙がこぼれます。


★本日早朝に投稿した「珍訳聖書・他2題」ご覧頂きありがとうございます。残暑が厳しいですね。台風も近づいています。皆様十分お気をつけください。



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月あかりさんへ

ぼてふりさん

いやいや、的確なコメント有難うございます。

昔は今より不便で、もっと不衛生な生活環境だった。

けど、昔は良かった〜と、思ってしまう。
あの頃の生活に戻りたくはないのにですよ。
不思議ですね。

4000年前のエジプトの石版か壁の落書きにも
「今頃の若い奴は、何たらかんたら・・・」
人のする事は同じことの繰り返しですね。

2019/08/13 17:01:14

発展途上国と言われるあの頃

月あかりさん

歳をとって、体が不自由になればなるほど
世界が、喜びに満ちていた子供の頃の
想い出は、ますます鮮烈に蘇ってきます。

家族にしっかり守られていた子供時代は
ある意味、一番幸せだったと思います。

大人になってからの最高と言われる料亭の
高級料理より、お祖母さんの作ってくれた
アレコレの家庭料理の方が美味しいと思われます。
もう食べる事が出来ないから余計に美化されるのでしょうね。

あの毒々しいジュゥスですら感動する位美味しかった
ですね。進歩〜進化って良いのか悪いのか?
広い世界の格差に思います・・・

ちょっと場違いのコメント?かもしれませんね^^;

2019/08/13 15:09:16

桜の園さんへ

ぼてふりさん

粉末ジュースには大袋と1回分の小袋入りがありましたね。口が寂しい時は小袋をなめてました(笑)
駄菓子屋では細いストローがついたニッキ・ジュースも売っていました。
私の必須飲料はサイダーでした。
当時、大瓶1本35円でいつもラッパ呑みです。

醤油たれ付きのイカ下足が1串10円
お小遣い50円あれば十分でした。

2019/08/13 14:45:49

オレンジ味の粉ジュース

桜の園さん

懐かしいです!
粉末のソーダ水の元も
溶かして飲んでました。
当時は十分おいしかったです。

2019/08/13 09:37:25

emuさんへ

ぼてふりさん

記憶の糸を手繰り寄せながら、「ボク」の視点で書いてみました。
2話でも懐かしいアイテムが登場します。
祖父母の想い出はいいものばかりです。
このナビの大半が「祖父母」の役割を果たしていると思います。
自分自身の良き思い出作りもこれからは大切だと思います。
スイカは瓜の仲間ですから漬物にすると美味しいですね。祖母は椎茸の種木も持っていましたから、味噌汁の時は新鮮な椎茸を使っていました。

2019/08/12 21:45:51

懐かしい

emuさん

車に三角窓ってありましたねぇ
それと、スイカの皮で漬け物を作ってもらって食べてました
あの頃は良かったなぁなどと思ってます

2019/08/12 21:20:40

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