花かるた

アドリア海の女王  1話 

2018年07月12日 ナビトモブログ記事
テーマ:旅行記

イタリアの国内線で
マルコ・ポーロ空港へ飛んだ。


ヴェネツィアは2度目だが、前回は列車で
陸路から入ったのでこんな入り方もあることに興奮 〜
なぜなら私が好きなチョイ乗りの船。
水上バスなるもので、アドリア海を走るのだから。

ゾロゾロと人々は桟橋から乗り込んでいく。
窓際はすぐに埋まってしまい、私たちは空いていた
後部席の真ん中に座った。


いざ!ベニスへ!発進!


水上バスは想像したより船足が速い。
たちまち海に躍り出るや滑るように海面を走っていく。

クルージングなどの船に比べて、低く小さいので
結構なスピード感がある。跳ね上がった水が時折
ザザッと音を立てて窓にしぶく。

いつも思うこと。
イタリアは空も、雲の色までも違って見える。
海と空が一体になり、私たちは水上バスが
ダイナミックに走る臨場感に大喜びだった。

やがて、そんな小さなスリルにも慣れた頃
目線は自然と船の中に向く。

端っこに乗務員が立って、しっかりと
全てを見ている。目が合うと親しげに
ニッコリ笑うイタリア男。実に魅力的だ。



でも、この目が曲者なのを私は知っている。
白人とは何回かバトった事があるのだ。
ここに来る前日のローマでだって・・

コロッセオを、ウロウロ見学していたら
娘が、売店にいる私の所に紐つきで逃げてきた。
男女のカップルが、古代ローマ人の装束でいたので
写真を撮ったという。

観光客相手に商売をしている輩だ。
(正確には白人・とは言えないかもしれない)

娘を追いかけてきて、そのことを大きな身振り手振りで
私に訴える。500円を請求しているようだ。

それ位ならば、とお金を差し出したら、違う!と怒る。
5000円だと言うのだ。


「えっ!」

このポリエステルのペランペランの服をまとって
美しくもない、あなた達の写真を遠くから
撮っただけで?当局の許可を得ているのかだって
あやしい奴〜

「5000円〜?」 

男がにこやかに、やっと分かったかという顔で
大きく頷く。

チッ・チッ・チッ・・(゜-゜)

私の導火線に火が付いた。

いくら温厚な日本人だって足元を見すぎでしょう。
怒りだしたおばさんに驚いて彼らは逃げて行った。

逃げて行ったが、あの顔は何かあると
瞬時に見たこともない、冷酷な狐顔に変わるのだ。
それに比べたら不愛想とは言え、日本人の狸顔など
可愛いものだと思える。


さすがお母さん! 娘がおだてる
うん、いつでも言ってネ!



―――――――話しが脱線した――――――――


船内乗務員がニッコリしたところで、
我々の前席にいた二人が、熱烈なキスを始めた。

りゃりゃりゃ!!!

年甲斐もなく、狼狽えた私は目を逸らした。
すると其れまで気がつかなんだ光景が
目にとびこんできたのだった。何と!見渡す限り
二人連れはほぼ全員、熱い抱擁の真最中だった。

偏見も差別もするつもりは無いが
年配者や、見るからに年寄りの果てまでが
見つめ合ってはキス、キス、キッス!!!!
何回も、いつまでも…完全に2人の世界に
浸りきっている。

急激に空気は変わり
狭い水上バスの中は、一面濃いピンクの濃霧に
覆われた。実際に私の目には、ピンクの靄が
モヤモヤと漂うのが、見えたほどだった。

熱い!熱い!!!〜 

何なのだ〜この人たちは!!!


私は自分の目ばかりか、隣に黙ってチンマリ座っている
娘の目までも覆いたくなった。

バスは走る♪〜アドリア海を〜♪〜ピンクの靄に
絡められた男とオンナを閉じ込めて。

間も無く、海のあちこちに立つ沢山の長い竿の
ような黒い棒が見えてきた。あと少しで
ヴェネツィアに到着だ。

やっと、サンマルコ広場脇の船着き場に着いた。
その解放感たるや半端なく、私は大きく深呼吸をした。

                     続く

  

29-12  



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さも有りなん(笑)

月あかりさん

笑いました!

まはろさんのお話の方が一言でとても面白いです。

ゴンドラは乗れていないのです。
シャンパンを飲んで歌に景色に酔いしれて・・
憧れです。私が乗った時も怒鳴って欲しい。
カンツオーネの伴奏ですね。

2018/07/14 09:14:45

楽しいお話続き待ってます

まはろさん

最高に楽しいお話でした
昔行った時を思い出しました
ゴンドラでいい男が美声で歌ってシャンパン飲んで良い気分の時 窓から大声で怒鳴る声イタリア語分からないので何??・・顔を見合わせ・・聞きました
うるさい〜〜〜 と言ったそうです
皆で大笑い 確かに住んでる人にはね 煩いでしょうね

2018/07/14 04:06:29

コメントありがとうございます

月あかりさん

>ブログもyoutubeもさいこう〜

Mr.mさん最高の賛辞を頂戴しました(^^♪

拙い作文に、変なおばさんの旅行記です。

数年前の旅を思い出しながら書いています。
2話もお読みいただけましたら幸いです。

2018/07/13 09:56:04

みさきさん、ムラーノ島ですね

月あかりさん

一回目の団体で訪れた時はモーターボートで
私たちも行きました。希望者なのですが「見る気満々」の野次馬化した全員が行ったと思います。

担当者がついて、案内されるのですが
確かに見えない「圧迫感」はありました。
お値段、高かったですよ。
あまり売れてなかったみたいでした。

>続きを楽しみにしています。♪
嬉しい!〜がんばります。

2018/07/13 09:46:33

アドリア海

さん

ブログもyoutubeもさいこう〜

続きを楽しみに待っています^^

2018/07/13 05:20:22

リラリラリラ〜ッ!

みさきさん

海に繋がる広い水路をモーターボートを飛ばして、ヴェネチアン・グラスの製造工場へ。「無料見学」の言葉に乗せられた妻。「買わなければ帰れない雰囲気だった」と夫。観光立国のイタリア、あらゆるサービスに、もれなく付いて来るリラリラリラ〜ッ!。思い出に甦る20余年前の潮風と雑踏と陽気で逞しい商魂。

さて、女王様の旅路やいかに。
続きを楽しみにしています。♪

2018/07/13 00:48:54

私は張り子のトラです(笑)

月あかりさん

つちのえさん、イタリアは隙さえあれば
スリや置き引き、万引きが横行していますが
命まではとらないんですって。

スペインのマドリードで、それに比べて
ここは命を取られますから、狙われたら
抵抗してはいけませんよって注意を受けました。

この人たちは多分、ロマ=昔のジプシーで
勝手に賃稼ぎをしているんです。
観光客とイザコザを起こし警官が来ると
面倒なことになるんだと思います。

2018/07/12 23:36:19

蚊帳の外?痛い所を・・

月あかりさん

漫歩さんに言われて覚醒しました。

次回は恋人と行きますね。。
狼狽えなくて済むように仲間入りしようと思います。

アッ!その前に誰か・・・
恋人を探さなくては(^^♪〜アハハ

2018/07/12 23:18:15

アドリア海の女王・それは私?

月あかりさん

アダージョさん
考えてみたら、女王様??のこの先の冒険談は
もう無いんでした。

書いているうちに長くなって「1話」で
区切ったんですが、今、残りを見たら
6行しかありませんでした(笑)
どうしましょ?!
徒歩の島だから事件性も無いんですよ。

今夜は海の苦しみです( ;∀;)

2018/07/12 23:11:59

二人ための世界はあるの〜♪

つちのえさん

月あかりさん、こんばんは。
彼らが逃げるほどの月あかりさんの怒り様って
よっぽど恐ろしかったのでしょうか〜(笑)
海外旅行の時は一緒に行っていただいたら心強いですね!
お金のためなら何でもするという感覚、日本人には理解しがたいですね。
人前でのキスも・・(^^;

2018/07/12 22:11:06

ー 郷に入りて郷に従えず ー

漫歩さん

月さんが狼狽えたのは、キスが出来なくて蚊帳の外になってしまったからでしょう。


とにかく、読者心理を我が物にしていますね。

2018/07/12 21:55:07

夢か幻か

アダージョさん

月あかりさん

私にはスクリーンの中の 叔母さまの 失礼海の女王の冒険物語のようです。
この先どんな冒険が 待っているのか楽しみです。

2018/07/12 20:37:50

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