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パトラッシュが駆ける!

キルト展 オジンが見ても いいもんだ 

2018年06月01日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

「目黒といえば雅叙園」
東京人なら、きっと名前くらいは、ご存知でしょう。
近代的なホテルでありつつ、その内部には、
古き良き時代の香りを、色濃く残している、
世に稀なる、宿泊宴会施設です。

その「古き良き」の象徴が「百段階段」と呼ばれる、
木造の建造物です。
昭和十年の建築ですから、古色が際立ち、そこに、
文化財的価値があることは、言うまでもありません。
しかし、よく手入れが施され、床には、塵一つ落ちていません。

この階段に沿って、七つの広間があり、それぞれの壁や天井には、
彫刻や絵画など、贅を凝らした装飾が施されております。
その彫刻は、桃山文化を思わせるもの、あるいは、
日光の東照宮を想起させるものもあります。
部屋は清閑であり、それぞれに、幽玄な空気が漂っています。
タイムスリップして、戦前の昭和に、迷い込んだような……
いや、もっと昔でもいい。
丁髷の侍や、十二単に、垂髪の上臈が出て来ても、
不思議はないくらいにです。

この特異な空間を利用し、折々に、展覧会が開かれています。
今回は「和キルト展」
元々が、アメリカで発達した、パッチワークキルトに、
和布を用い、色彩紋様などに、工夫を加え、日本人の感性に、
合うようにしたのが、「和キルト」の由縁のようです。

なるほど、着物や帯、暖簾などに、キルトの装飾を施したものなどが、随所に見られました。
欧米から移入したものに「和」の心を加える。
これぞ「和魂洋才」であって、日本人の、昔から得意とするところです。
「換骨奪胎」の域にまで達し、欧米のそれとは、
似ても似つかぬものもあります。

その多彩な展覧会に、当シニアナビのメンバーである、
Reiさんが出展しています。
しかも、審査員賞を、受賞されているとか。
私は、案内を頂くや、すぐさま目黒へと、駆け付けました。

春は桜、秋には秋刀魚で、有名なところです。
なに、目黒で、まぐろが食いたい?……あーたも変な人ですね。
それは“ま違い“……どうぞ、築地の方へ、お回り下さい。

目黒駅から、目黒川方面へと、坂を下ります。
その名を「行人坂」……
江戸の昔、行人つまり、修行僧や乞食(こつじき)僧が、
多く往来したことから、名付けられたと聞いています。
東京に、数ある坂の中でも、私はこれ以上の急坂を知りません。
いや、坂を厭うわけではありません。
私はむしろ、坂が好きです。
ついでに、石段も好きです。
喘ぎつつ、それらを登る時に、ふと物語を感じる時が、
あるからです。
ついでに、橋も好きです。
お寺も好きです。
私はきっと、変人なのでしょう。
車なんぞない、江戸の昔に生まれればよかった……
なんて思うことが、しばしばあります。

坂を下り切ると、そこがもう、雅叙園の構内です。
「雅やかに叙する」
良い名前です。
私は昔(うんと若かりし頃)「がじょえん」と聞き、
それは「雅女」が集う、キャバレーのようなものかと、
思っていました。
無知でした。
「じょ」が付けば、何でも、女性へと結び付ける、
私の悪い癖が出たのでした。

正面玄関から、百段階段へと向かう、そのエレベーターに、
初めて乗った客は、きっと驚かされるでしょう。
その大きさ、普通のホテルのエレベーターの、優に三倍はあります。
その立方体の、四囲そして、天井にまで、見事な装飾が施されています。

そしてまた、三階まで上がる、その速度の緩やかなこと。
東京で、最も高速のエレベーターはと問われたら、東京スカイツリーのそれを、そして、最も緩慢なるを、と言われたら、ここ雅叙園のそれを、答えておけば、間違いないでしょう。
このスローなことに、苛立ってはいけません。
どうぞ、心行くまで、この宝箱の中に、ご滞在下さいという、
施設側の、親切心なのですから。

さて、いよいよ、百段階段の始まりです。
私はこれまで、この階段を何度も登り降りしていますから、
特に新鮮な感動はありません。
たかだか百段、トレーニングにもなりません。
それよりも、私の心は、キルト展に向け、逸っております。

上りかけて、最初の広間に、入賞作品が、集められておりました。
目指すReiさんの作品も、衣桁に掛り、そこに燦然とありました。
「夢まぼろし」
と題し、どうやら、作者の心象風景を描いているようです。

微視すれば、三角形と台形の布の、組み合せです。
それが寄り集まり、風車ような個体を形成し、その個体が、
あまた連なることにより、巨視すれば、花の群落のように、
見えなくもありません。
例えば、アジサイです。
紫陽花と表記した方がいいですね。
文字通り、紫を基調としているのですから。

その濃淡が、作者の夢の移ろいを表しているようにも見えます。
背景に、曲線が多用され、直線との対比の上に、
絵としてのバランスを保ち、さらには奥行きを深めています。
私は最初、山の斜面を彩る、紫陽花の群落かと、
これを見ました。
会場を一巡し、また見直した時に、今度は、岩肌を流れる、
滝のようにも、見えました。
それは、作者の思いとは、違うかもしれません。
しかし、私がそこに、清冽な詩を感じたのは、確かです。
三巡して見たら、また別の何かを、イメージしたかもしれません。

審査員賞を受賞しています。
それも、宣(うべ)なるかな……です。
作者の才気が、画面を迸っている、そういう感があります。
この労作を仕上げた、その熱意にも、心からの敬意を、
表さずに居られません。

「才能に触れる」
それは、とても楽しいことです。
私は、このシニアナビにより、音楽、美術、詩歌、料理、
陶芸など、多くの分野の、才人と知り合うことが出来ました。
SNSには、弊害もあるけれど、活用次第により、
意外な余慶に恵まれるものと、思ったりもしています。

会場には、たくさんの作品が展示されており、そのいずれもが、
瞠目させられるものでした。
素晴らしい……の一語です。
皆様に、ご鑑賞をお勧めする由縁です。
六月二十四日まで、開催されております。

尚、雅叙園に行かれましたら、本館一階奥の、トイレにお行き下さい。
催さない?
そんなことは、どうでもよいのです。
トイレの中に小川が流れている。
こんな光景、東京中探したって、ありゃーしませんから。



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是非どうぞ

パトラッシュさん

四つ葉さん、
お時間がありましたら、是非どうぞ。
素晴らしい作品揃いですから、決して、後悔はなさらないと思います。

尚、お出かけになる日が決まりましたら、Reiさんに連絡を取ってみたら、いかがでしょう。
何か、格別の情報が、得られるかもしれませんので……

ホテル内も、是非見学なさって下さい。
懐古趣味が、いたるところに、あふれておりますので。

食事処も、たくさんあります。
(でも、少々高い。ホテルだから、やむを得ないですが)
私は、目黒駅まで戻り、駅ビルで食べることが多いです。

2018/06/01 20:51:06

素敵ですね。

四つ葉さん

パトラッシュさんこんにちは。

本当に皆さん才能ある方々ばかりで、素晴らしいですね。
こういう情報はありがたいと思います。
こうしてナビで繋がりでご縁もあるかと思います。

やはり‥芸術に触れる事は大切だと日々感じております。
Reiさんの作品と雅叙園の百段階段だけを見に娘と日帰りでも行けると思いますので出掛けてみたいと思います。

情報をありがとうございます。

2018/06/01 17:17:24

残念ですが……

パトラッシュさん

喜美さん、
お嬢さんが代わりに、しっかりと見て来て下さるでしょう。
カメラを持つように、おっしゃって下さい。
いや、スマホをお持ちだから、大丈夫ですね。

このシニアナビには、才能のある人が、居るものです。シシーさんのピアノといい、Reiさんのキルトといい、今回つくづく、それを感じました。

2018/06/01 16:27:41

行けない

喜美さん

とても残念に思っていましたけれど
パトさんのおかげで70% 最も見に行ってもこんな報告出来ないと思います 良かった 娘は行きますから
伝えておきます

2018/06/01 15:49:25

一見の価値ありでした

パトラッシュさん

漫歩さん、
そうでしたか……
百段階段と同い年でしたか……
義弟さん、味なことをやりましたね。

百段階段は、まだまだ健在です。
漫歩さんも、ますますご壮健で、何よりです。

「和」の際立つ展覧会でした
これまで知らなかった、キルトの世界が、にわかに身近なものになりました。

2018/06/01 15:41:07

なにをおっしゃる……

パトラッシュさん

Reiさん、
これを芸術と呼ばないで、何を芸術呼べばよいのでしょう。

会場では、圧倒されました。
感心の、しっ放しでした。
この展覧会は「ついで」ではなく「わざわざ」行く価値があります。

そこに出展出来たってことは、Reiさんの、勲章のようなものですよ。

2018/06/01 15:34:45

大丈夫

パトラッシュさん

みさきさん、
息は切れません。
この階段は、踏みしろが広く、つまり傾斜がゆったりしています。
加えて、周囲は、文化財ばかり……
それらを眺めつつ上がると、息の切れるヒマがありません。

作品は、日本の美を表すものが、多かったです。
当然に、細かい技巧が凝らされていました。
その根気たるや……
ただただ、作者の努力に、頭が下がりました。

ご帰国の際、お時間がありましたら、雅叙園へもどうぞ。
展示会がなくても、見学が出来ます。
昭和のお大尽が、お金に糸目を付けずに、よくぞ建てたものだと、感心させられます。

2018/06/01 15:29:58

展示場も作品も素晴らしい!

漫歩さん

私が初めて百段階段を上ったのは、義弟夫婦が還暦祝いに招待してくれたときでした。彼曰く「兄貴が生まれた年に出来た建物なので此処にしたんですよ」。改めて建物の素晴らしさを思い出しました。

Reiさんの大作、素晴らしいですね。
ヨーロッパで手芸として発生したキルトですが、和の色彩、和の感性で見事な美術品に仕上げられましたね。

2018/06/01 14:30:12

ありがとうございます

Reiさん

さっそく見に行っていただき、ありがとうございました。
師匠の文章にかかると、私の作品も芸術的に?感じられます(^^;
憧れだったあの場所に展示してもらい、たくさんの人たちに見ていただけることが喜びです。

肩こりにめげず、作ってよかったです(^^)

2018/06/01 13:12:18

素晴らしいですね。

みさきさん

知人が、何年か前の雅叙園のキルト展に出品したと聞いています。細かいピースと繊細な色使いのを大作が多いそうですが、とても遠いので、足を運べません。
目黒の地もご縁がなく、有名な雅叙園もテレビでしか見た事がなく…。ですから、和風キルトが似合いそうな空間の描写をいただき、お写真のRei様の作品をその中に思い浮かべて、楽しませていただきました。
それにしても、この階段…、息が切れてしまいそうです。

2018/06/01 13:03:51

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