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カシアス

父の怪訝な顔 

2017年07月29日 ナビトモブログ記事
テーマ:旅の者(新潟・東京・姫路)

私のサラリーマン46年で、唯一の単身赴任、
1997年から2年間の広島県福山市の
某製鉄所勤務時代の事だが・・・

昼間は会議や来客対応などが、文字通り分刻み、
夜は会食、2次会、土日はゴルフ、その他で略埋まり、
自分の身が自分で無いような日々が続いた。
総務部長が、是非、単身で赴任してください、
と言っていたのは当然だった。

当時、父は80代、母は70代半ば、
2人だけで住んでいたが、一度福山に来た事がある。
まだ動けるうちに単身赴任息子の状況を見たい、
と言うことだったのだろう。
初夏の良く晴れた土曜日、
昼前に自ら車を運転して駅に迎えに行き、
親子3人水入らず(?)の一日を過ごした。

製鉄所と私の住みかを車から見せ、昼食後、
深緑の山道を鞆の浦まで1時間余りのドライブをし、
港沿いのホテルらしきところでコーヒーを飲んで小休止。
旧い漁港には小さな木造の漁船が静かに並び、
午後の明るい陽射しが
港外の無数の波頭に反射してきらめく。
やがて、港の沖合に浮かぶ仙酔島のホテルから
迎えの渡し船が来た。
両親を乗せて見送れば、お役目終了、一件落着だ。

やや足元のおぼつかない父の手を取り、
岸壁の石段を5,6歩降りた時、
父が、一緒にホテルに行って、食事をしようと言う。
明日朝早くにゴルフだから今日は戻るといい、断ると、
父は一瞬、合点の行かない顔をしたが、
何も言わずに母と伴に船に乗る。
船が岸壁を離れ、島に向かい、
やや逆光の両親の姿はいつまでも動かず、
ずっと此方を見ているようだった。

時は過ぎ、10年後に母が、その翌年に父が亡くなった。



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父も・・・

カシアスさん

そうは言っても、食事をしてその日に帰れば
翌日のゴルフに支障はなかったのです。
だから、今でも行けば喜んだだろうな・・・
と思い、
今でも、こちらを見る父の姿が目に浮かぶのです。

2017/07/29 15:02:20

多分

さん

リーマンにとって、ゴルフは出世の一里塚。

父上も、分かっていたことでしょう

2017/07/29 13:15:32

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