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パトラッシュが駆ける!

雨 

2010年03月12日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

雨が多い。
三月になったら、中山道歩きに、出発したいと思っていたのに、
そのきっかけをつかめないでいる。


忘れもしない、昨年五月、私は東海道を歩いていて、遠州から三河に入り、
そこで半日雨に降られた。
ずぶ濡れになって、一旦帰宅すると、咳が止まらなくなり、
とうとう気管支炎になった。
あれ以来、私は雨中行軍はやらないようにしている。


Jリーグのガンバ大阪に、二川という選手が居て、
これが小柄ながら俊敏で、足技にも優れている。
彼を見ると、私はつい、東海道の二川宿を思い出す。
格子造りの家が並び、宿場の雰囲気を今に残す、好ましい町であった。
折しも雨が降っていて、町は静かであり、
さながら絵を見ている気分になった。


しかし私は、その絵になる雨に、やられてしまった。
私はガンバの試合を見ていると、つい昨日のことのように、
自分が気管支炎になったことを、思い出してしまう。


若い頃の私は、頑健そのものだった。
医者に行ったことが、滅多になかった。
と、すぐに自慢したくなる。
これがいけない。
私もようやく、人並みになったのだと、こう思った方がいい。


 * * *


雨だと、客足が落ちる。
なんて言うと、私の店を、大層に想像されるかも知れないが、
実は五坪ほどの小店であり、私の小遣いを、稼ぐためだけの店である。
普段でも、ヒマなのである。


「メシでも食いに行こうか」
「はい」
誘えば妻は、おおむね快諾する。
それもそうだ。
主婦だって人の子、仕事をサボるについて、これが嬉しからぬはずはない。


「今日は、何処へ?」
「居酒屋」
「ランチがあるの?居酒屋に。そこで何を食べるの?」
「おでん。ちょうどいいだろ、寒いから」


私は今、B級グルメに凝っていて、折々にその体験を、
エッセイなどに書いている。
すると、情報をもたらしてくれる人が現れる。
店が近くであれば、私は日を置かず、確かめに行くようにしている。
銘菓などを頂戴したら、速やかに試食して、感想を申し上げるのと同じだ。
そうすると、相手は張り合いを感じ、また次の吉報をもたらして下さる。


開店時間に合わせて行ったら、もう十人ほどが並んでいた。
店の真ん中に、畳半畳ほどもありそうな、おでん鍋が鎮座し、
盛んに湯気を立てている。
「お好きなものを、お好きなだけ、この伝票に書いて、ご注文下さい」
店員が言う。
テーブルに届けてくれるそうだ。
何回でも、お代わりが出来る。
つまり、おでんバイキングなのである。


「但し、食べ残しは、やめて下さい。残された場合は、
その分、代金を頂きます」
店員が言うのも、もっともだ。
近頃、食べ物を粗末にする人が多過ぎる。


私は、バイキングでやたらと皿に盛りまくり、挙句に食べ残すほど、
イナカモンはないと思っている。
イナカモンとは、地方出身者への蔑称ではなく、やることが、
スマートでない、品性に欠けるくらいの意味だ。
そんなのに限って、身なりは一応、整えている男女が少なくない。
「バチが当たって、今に食えなくなってしまえ」
見かけると、私は心の中で、呟いている。


「しぞーかおでん」だそうだ。
他にも、「富士宮焼きそば」なんてのがあり、
つまり静岡にゆかりのある店であるらしい。
唐揚、カツなどの、揚げ物がある。
餃子がある。
刺身もある。
デザートまである。
これで一人980円。
店に申し訳ないから、私はビールを頼んだ。
居酒屋で酒を飲まないのは、饅頭屋に入って、茶だけ飲んで帰るくらいに、不自然であり、不義理だと思っている。


「どうだい味は?」
「美味しいです。特に大根、玉子、黒はんぺん、牛スジ」
これで合格。
コンクリートが剥き出しの、床も天井も気にならない。
壁に貼った、手作りの静岡県地図なんぞ、小学生みたいなところが、
むしろご愛敬でいい。
私の名店リストは、ミシュランガイドなどと違って、極めて簡単だ。
何か一つ、秀でたものがあれば、それで☆一つだ。


ちなみにこれは、人間にも言えることだ。
私の好きなのは、何か際立つものを、一つでいい、持っている人だ。
趣味でもいい、特技でもいい。
もちろん見識でもいいし、哲学でもいい。


但し、お金だけは、その何かから外している。
私は今や、金儲けに興味がなく、お金持ちにも関心がないからだ。
但し、金持でも、奢ってくれると仰るなら、話は別。
その奢りっぷりが、爽やかであるなら(つまり、そこに打算がないなら)、
人物評価を上げてもいいと思っている。
そんな金持、滅多に居ないけれど。


 * * *


雨が止まない。
とうとう霙(みぞれ)に変わった。


「あなた、今日は児童館ではないですか」
コタツでうとうとしていたら、携帯が鳴り、出たら妻だった。
家族間通話は無料なのだそうで、妻は最近、用事があると、
インターフォンでなく、わざわざ携帯に掛けて来る。
建物の三階から、一階へである。
私の携帯たるや、世間に番号を知らせてないこともあって、
今や、妻との専用回線みたいになっている。


「いっけねぇ」
ころっと忘れていた。
本日は、子供達に囲碁を教える日なのであった。
私は、取るものも取りあえず、霙の中を、児童館へと駆けて行った。
近いから助かる。
5分の遅刻で済んだ。
そして、大丈夫。
出掛けに鏡を見たが、赤くはない。
私が昼間から、生ビールと酎ハイを飲んだことなど、誰も気付くまい。


それにしてもだ。
若い頃は、こんなドジを踏まなかった。
と、すぐに自慢するからいけない。
私もここへ来て、とうとう人並みになったのだと、こう思った方がいい。
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