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スタインウェイ社での、ピアノ選定 

2016年11月11日 ナビトモブログ記事
テーマ:音楽

我が家のピアノは、音色が良い。

機種は、我々がよく「小スタ」とちょっと自嘲的に呼ぶ、小ぶりなスタインウェイである。

これは、カナダに住んでいた頃、家族で米国旅行をした時に、ニューヨークにあるスタインウェイのお店で選定した愛器である。

あれは、楽しい経験だったなぁ。


子供の頃から、ピアノの王者という意味で、スタインウェイは、憧れであった。

大きなホールには大抵、スタインウェイのコンサートグランドが置いてある。

ホールの響きと相まって、それはそれは素晴らしい音色であった。


大学に入学すると、レッスン室にはスタインウェイのピアノが設置されてあったので、それからはちょっと身近な存在になった。

当時は、演奏会ではスタインウェイピアノを弾く事が多かったから、普段からイメージの中で、本番でスタインウェイを弾くことを前提としながら練習するようになった。


それから、数十年。

カナダに住んでいた頃、スタインウェイのピアノを購入することにした。

購読していた新聞に、たまたまスタインウェイの広告が載っていたので、その本社に手紙を書いて、ニューヨーク店の場所を問い合わせた。

すると・・。

あちらの方から、我が家に電話がかかってきたのだった。

まあ実態は、ラッキーな事に(?)私は不在だったので、改めて主人の勤務先にかかってきたのだけれど。

つまり、当時私がピアノを借りていたオタワ市の楽器店が、スタインウェイの総代理店だったので、そこから番号が解ったらしい。

アナログな時代であった。


以前アメリカ在住時、住んでいた小さな大学町はニューヨーク市に近かったので、知人の銀婚式の盛大なパーティーに参加する途中に、寄ってみることにした。

カナダから車で南下してしていく途中、ボストンシンフォニーが夏の音楽祭を開催する、タングルウッドの野外コンサートにも足を伸ばした。

夏だったけれど、とても寒くて、Tanglewoodと胸のところに書かれたトレーナーを、家族四人分、色違いのお揃いで買い求め、早速着込んだのも懐かしい。

それは、初めて子供達と一緒に聴いたコンサートで、まるで、ナイアガラの滝にでも行った様な観光旅行気分だったから、何を聴いたか余り覚えては居ないけれど・・。


翌日、ニューヨークへと更に南下。

高層建築の立ち並ぶニューヨークシティの街に入って、子供達と一緒に興奮しているまま、スタインウェイのお店に到着した。

そのお店は、カーネギーホールの隣にあって、昔コンサートを聴きに来た事等をを思い出して、私はすっかり嬉しくなった。


名前を言うと、すぐ担当の男性が出てきて、その人はそれから日本へ帰った後も、ずっと対応してくれた。

こちらが(主人が)大体の予算を告げると、何十台ものグランドピアノが並んでいる広〜い部屋に案内された。

「どうぞ、ゆっくりと試して下さい」


私は、静岡県にあるヤマハの本社へ、ピアノの選定には何度も訪れている。

自分のピアノを買う時は勿論、生徒達がグランドピアノを選定する際にも付き合って・・。

大体ヤマハでは、希望の型のピアノを三台準備してくれて、そこで弾き比べをするというパターンであった。

余り沢山並べられても、かえって迷ってしまうからと、長年の経験から出来上がったスタイルなのだと思う。


その辺、スタインウェイ社は、実にオープンであった。

「大体この辺に並んでいるピアノが、ご希望の価格です」と案内してくれる。

私は、何十台ものスタインウェイの中で、一台一台と、ピアノの感触を確かめ、響きを確かめていく。

楽器の個体相違はあるけれど、どのピアノを弾いても、それぞれの音色が、胸に飛び込んでくる。

何という豪奢な時間だったろう。

「もし大きな型がお望みなら、同じ価格で少し古いピアノもあります」といって、別室に連れて行ってくれたりもした。


いつまでも迷っていたい気分だったが、当時小学生だった子供達がすっかり飽きてしまい、「早く、マクドナルドへ行ってご飯食べようよ」と、日常的な世界に連れ戻す。

頃合いだと思い、最初に気に入った楽器を買うことに決めて、手続きをした(主人が)。


帰国も近かったので、日本へ直接届けて貰うことにした。

それが、今の我が愛器「小スタ」である。


弾き始めた頃はまだ、楽器の堅さが残っていた。

それが、10年くらい弾き込んでいくうちに、少しずつ熟成してきたと言おうか、音色に味が出てきた気がする。


既に音大を卒業しているけれど、今も私の処で勉強を続けている弟子の一人などは、我が家でピアノを弾くのが楽しみだ、と言ってくれる。

さすがに彼女は、いつも音色に耳を傾けているから、自分が弾いて出す音の響きがよい。

特に最近、左手で弾く低音にどんどん奥行きが出てきて、訊いてみると、彼女は左利きなのであった。


演奏はまず、美しい音色あってこそである。

毎日、バッハの曲に没頭しながら、出てくる音色が魅力的なことに、小さな幸せを感じている。



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練習しなきゃ・・

シシーマニアさん

澪さん、おはよう!

そうです。
きっと愛車を手なづけるのに似ています。

でも、馴染んでいても、大ホールのコンサートグランドにはかないません。
場所の問題もありますが。

幸か不幸か、ピアノは自分の楽器を持ち歩けないから(中には、まれに居ますが・・)出たとこ勝負です。

平等ですから、まあ奏者の実力がモロ出てしまいます。

2016/11/14 08:51:52

なるほどです

澪つくしさん

シシーさん ご無沙汰してますm(__)m

>弾き始めた頃はまだ、楽器の堅さが残っていた。

>それが、・・・弾き込んでいくうちに、少しずつ熟成してきたと言おうか、音色に味が出てきた気がする。

なんとなくわかる気がしますね!
いくら名器で愛器でも、夫婦と同じでしょうか?
馴染んで行くほどに、味が出る??

音の分子がまっさらな木の分子と共鳴しあって・・・
オーナーの癖をしっかりと受け留めて馴染んで行く・・・

車の新車でも同じですd(^-^)ネ!
始めはなんかそぐわない感じ!
それがいつしか車とオーナーが一体になって・・・

シシーさんと「小スタ」の妙なる旋律を、耳にしたいものです♪

2016/11/13 12:56:26

楽器に対する、愛着でしょうか

シシーマニアさん

師匠、コメントありがとうございます。

多分、スタインウェイという名前に洗脳されているところも有ると思います。

でもきっと、毎日弾いている方の愛着が特別だと、楽器の方も、歩み寄ってくる気はします。

科学的に考えれば、弦の張り方や、ハンマーのフェルト部分の摩滅の仕方などに、奏者の弾き方が反映されているのでしょうね。

まさに、本屋大賞を得た作品「羊と鋼の森」の世界です。

調律の人への注文も、弾く人に寄って当然違うでしょうし・・。


それが数十年にも及ぶと・・。

2016/11/11 18:49:58

村雨さん

シシーマニアさん

いつもコメント有り難うございます。

そうですね、楽器と奏者が、次第に歩み寄っていくのでしょうね。

勿論、スタインウェイに限らず、ヤマハピアノも最初の半年くらいは、楽器と奏者の間に距離がある気がします。

只、スタインウェイは、そのスパンが長いですね。勿論寿命も・・。

2016/11/11 18:41:10

「音色に味が出る」……

パトラッシュさん

なるほど、そういうものですか。
その小スタは、既にして、楽器という道具の域を超え、
形而上の何物かに、昇華している印象を受けます。
シシーマニアさんの、向き合った時間の長さと、
注いだ心血が、その昇華を、より美しくしていることは、
言うまでもありません。

その小スタを、見てみたいものです。
もちろん、それに向き合う、オーナー(いや、パートナーかな)の姿もです。

2016/11/11 11:36:34

スタインウエイ

さん

素人でも、この名まえは聞いたことがあります。

楽器が奏者と一心同体になって成長していくなんて、思いもよりませんでした。
音の女神の境地といったら大げさですか?

2016/11/11 10:01:34

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