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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](八十六) 

2016年07月26日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「いや、いかせて!」
と、何度も叫んだ。
しかしその何かは、離すどころかグイグイと引っ張る。

「麗子! 麗子!」
聞き覚えのある声だった。
ほほに痛みを感じ、麗子は我に返った。

「どうしたんだ、一体。体を急に痙攣させたと思ったら、今度は硬直させて」
「ここは、どこ? あ、武さん。
あたし、夢を見ていたのかしら。違うわ、夢じゃない。
そう、そうなの。あそこが、天国への入り口なのね。
あれは、亡くなったおばあちゃんだわ。
優しかった、田舎のおばあちゃんが、お迎えに来てくれたのね」

麗子の表情は穏やかだった。険が消えていた。
笑っている時ですら消えなかった、顔の険が消えていた。
ベッドに横たわったまま、ピクリと体を動かすことも無く、麗子は話し続けた。

それは、男にではなく、己自身に言い聞かせているようだった。
「ありがとう、武さん」

ごく自然に、麗子の口から感謝の言葉が出た。
優しい声だった。
男には、一瞬麗子の顔が菩薩様に見えた。

信じられない光景だった。
あの高慢な麗子が、男を見下していた麗子が、これ程に優しい表情で、声で、男に、「ありがとう」と言ったのだ。
まるで、憑き物が落ちたような、麗子の表情だった。

「そう、そうなの、麗子は生まれ変わったの。昨日までの麗子は、昇天したわ。
おばあちゃんが、連れて行ってくれたの。
『満ち足りる』と、いうことを知らなかった麗子は、昇天したの。
ありがとう、武さん」

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