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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (七十三)空瓶 

2016年07月11日 外部ブログ記事
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ミドリには、そんな男の気持ちが痛いほどに伝わった。
「これでいいのよ」と何度繰り返したことか。

男を責める気にはなれなかった。
かつての、愛されたいという気持ちは消えていた。
支えてあげなければ、という思いだけがミドリを頑張らせていた。

母の元に帰ろうかと思わないでもなかった。
夜遅く、疲れた体を引きずって帰るアパートで、ウィスキーの空瓶が散乱している部屋を見ると、情けなくなることもあった。
つい悪態をついてしまう夜もあった。

そんな夜は、いつも男の荒々しいセックスがあった。
すでに、余程の刺激がなければ、男は己を奮い立たせることができなかった。

ミドリにしても、優しい愛撫では燃えなくなっていた。
酔客相手の毎日で、ミドリ自身も荒んできていた。
あの白かった肌も、酒焼けの為かやゝ赤みを帯びてきていた。

「ここを客に触らせたのか!」
「ここを客に吸わせたのか!」
と、男はいたぶりそしてむしゃぶりついた。

「そうよ、ここよ、ここもよ」と、ミドリもまた男の嫉妬心を煽った。

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