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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港] (五十九) 

2016年06月15日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



辛い毎日だった。
炎天下の下、足を棒にしてスーパー・商店を回った。

一つの契約高が 数万円の仕事を取ることに、何度頭を下げただろうか。
急ぎの納品だと、まだ明けやらぬ早朝にチラシを届けたりもした。

夜になると、疲れ果てて泥のように眠りこけた。
ミドリは、相変わらずやって来た。

しかし、男の帰りが遅いことが多くすれ違いの日々が続いた。
そんなある夜、帰りが午前零時を回ってしまった。
鍵のかかっていないドアに驚きながら、かけ忘れたのかと部屋に入った。

暗闇の中にミドリが居た。
月明かりで、辛うじてミドリだとわかった。

ミドリは、男の胸に飛び込むと、火がついたように泣きじゃくった。
こんな遅くまで男を待ち続け、泣きじゃくるミドリは初めてだった。

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