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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](二十七) 

2016年04月04日 外部ブログ記事
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 男は飛び起きた。
いつの間にか寝入っていた。艶めかしい夢だった。
「しかし、どうして彼女の顔に。そうか、立候補すると言ったからか。馬鹿な、こんな俺にそんな資格があるものか」
 男は、大きく伸びをするとベッドから飛び出した。ハラリと、ミドリの名刺が落ちた。
「平井ミドリさんか…気持ちの優しそうな人だったな。彼がうらやましい、妹だなんて」
 誰に言うともなく口から出た。

気の重い毎日が続いた。
辞表を出す勇気も持てず、悶々とした日々が繰り返された。
相変わらず、部長の嫌みな言葉や、かつての同僚からの憐憫を受けていた。

 そんな煩わしい日々が続いたある退社時に、雨宿りをしているミドリに出会った。
あの時の事を思い出し、平井道夫への傘のお礼もあって、声をかけた。
「元気でしたか、ミドリさん」
名前を呼ぶことが気やし過ぎるかとも思ったが、あの喫茶店内での明るいミドリを思い出して名前を口にした。

 肩を落とし暗く打ちしおれていた瞳が、男の声に、明るさを取り戻した。
男は一つ傘の中で、あの夜のように快活に笑い興じた。
あの喫茶店で、同じようにコーヒーを注文した。

「うれしいです。会えないかなあ、っていつも思っていたんですよ。
でも、恋人とかいらっしゃるんですよね。
兄にも言われました。『学生時代にはモテモテだったぞ』ご迷惑ですよね、あたしなんか。
未だに、兄のペットのようなものですから。今夜も兄と待ち合わせなんです‥‥」

「それはいかん。すぐにも引き返そう。彼、待っているだろう」
という男に、「いいんです」と、ミドリは頬を染めた。
その乙女の如き恥じらいの仕種に、男はあの夢を思い出しドキリとした。

「しかし、平井君が‥‥」と、言いかけた男の言葉を遮るようにミドリはキッパリと、
「いいんです、そろそろ兄離れをしなくては。兄のお相手の方にも悪いですし」
と、交際相手もそこにいると答えた。

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