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敏洋’s 昭和の恋物語り

にあんちゃん 〜大晦日のことだ〜 (三十一) 

2016年02月27日 外部ブログ記事
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「じいちゃん、じいちゃん」
 ほのかが飛び込んだ。枕元には道子とそして次男が座っていた。
「おじいちゃん。ほのかが来たよ」
 次男が声をかけると、閉じられていた目がうっすらと開いた。
穏やかな表情だった。

シゲ子に感じた嫌悪感も、いま目(ま)の当たりにする孝道には感じない。
優しい気持ちで接することができた。
節くれ立ってゴツゴツとしている孝道の手を、愛おしくさすり続けた。
「じいちゃん。痛かったらお医者さんに言ってね。がまんなんかしちゃだめだよ」
「ありがとな、ほのか。分かったよ、分かったよ」

 弱々しい声がもれ、ゆっくりと目が閉じられた。
 痛みをこらえる仕草を孝道が見せると
「じいちゃん、がまんしちゃダメだよ。痛み止めがあるから、今あげるね。
それで少しねむってね」
「いいんだ、いいんだよ、ほのか。それより、ばあさんがな。ほのかに伝えて欲しいと言うんだよ」

 一気に話すことができず、ひと呼吸置いてからになった。
「ほのかを責めちゃいないよ。それどころか、ほのかには感謝しているよと言ってた。
だから、なにも気にすることはないんだから」
「あたしね、あたしね、ばあちゃんをね、をね‥‥」
 小さく首を振って「言わなくて良いんだから」と、目で告げた。

「じいちゃん、じいちゃん!」
 大声で叫びながら、長男が駆け込んできた。
滅多に感情を表さない長男が、大粒の涙をこぼしながら枕元に座った。
「そんな大きな声でなくても、聞こえてる。どうだい、受験勉強は」
 目を閉じたままの孝道の手をしっかりと握りながら
「大丈夫、大丈夫だよ。じいちゃんにもらったお守りがあるんだから。天神さまのお守りなんだ、効果絶大さ」

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