メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

パトラッシュが駆ける!

晩節 

2016年01月30日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

七十五歳と七十八歳。
共に、立派な老人ではないか。
と言うのは、適切でない。
日本語は時に、誤解を招く。
「紛うことなき老人」あるいは「歴とした老境」とでも言うのが正しい。

お二人は、老境にあってもめげず、なお、意欲を燃やしていた。
会社を経営し、利益を上げようと、連携し、策をめぐらしていた。
その策に問題があった。
大いにあった。
だから、世間からの、厳しい指弾を浴びることになった。

お二人の意欲の源は何なのか。
私は、歳こそ似たようなものだが、とっくに意欲を喪失し、
日々道楽に明け暮れている。
だから、その心底たるや、まったくわからない。

彼らはこれまで、こう言っていたのではあるまいか。
「利潤を上げ、それを従業員に分配し、株主へと還元する。
これは一つの、社会貢献にもなっているのです」

その経営を担う者として、吾こそは、余人を以て替え難いと、
こう自負しておられたのではあるまいか。
「歳なんか関係ない」
彼らは、きっと言うだろう。

遊蕩に明け暮れている、私の如き老残の身は、これに対し何も言えない。
ただ心の内で、呟いているだけだ。

あんたがやらんでも、誰かが出来るでしょ。
とっとと禅譲しちまいなさいよ、若いもんに。
人生ってやつは、卒業の連続だ。
金儲けだって同じ。
死んで、会社を、あの世に持って行けるわけもなし。

私がいくら言ったところで、彼らが頷くはずもない。
声の届かぬところに、居る人間だ。
だから、仕方ない。
「この欲深の、老いぼれめが」
テレビに映る、彼らの会社に向かって、毒づいている。

 * * *

ガラス戸を突き破り、車がスーパーの店内に飛び込んだ。
なんて事故が報じられる。
それがまた、忘れた頃に起きる。
必ず起きる。

多分・・・
だろうな・・・
なおもニュースを見ていると、やはりそうだ。
アクセルとブレーキを踏み間違えた運転者は、七十代、
八十代であったりする。
時に九十代さえ、いないでもない。

物損だけなら、まだいい。
死傷者の出るのが困る。
若者や幼児が、犠牲になる。
それも、ほどなく人生を終えようとする者の、ミスによってだ。
こんな間尺に合わない話はない。
「まったくもう・・・」
これも、テレビを見ながら、ただ呆れている。

私は、七十歳を前にして、運転免許の更新を止めた。
これを知った、友人の一人が言った。
「おれはまだ、大丈夫だ」
私が、運転に自信を失くしたとでも、思ったらしい。

「大丈夫なうちに、見切りをつける。これを潔いとは思わないか?」
さすがに、自分の口から、「美しい」とは言いにくい。

友人は笑っていた。
「潔い」だけでも、笑止であったのであろう。
そんなものが、お前に似合うものかと。
彼は、笑ってそのまま、今も運転を続けている。
交通至便の、大都市東京に住みながら。
歩いてでも行けるスーパーへ、奥さんを乗せ、買い物に行く。

ブレーキを踏み間違えた運転者だって、思っていたに違いない。
「おれはまだ大丈夫だ」と。
高速道路を逆走した老人。
歩道を爆走した老人。
皆同じ。
それが大丈夫では、なくなっていた。
これが、歳を取るということの、実相だ。
劣化、退化はあっても、進化なんぞないのだから。

 * * *

歳を取っても、なお譲らない。
引き下がらない。
これを意欲と言えば、聞えはいい。
意欲もまた、欲であることに、変りはない。

その欲に溺れ、前後の見境がなくなる。
おそろしいことだ。
廃棄物を横流しし、食品として売ってしまう。
そりゃ、儲かるであろう。

これを欲盛りの若者がやったのなら、まだわかる。
老人がやる。
人生からの、卒業を前にしてやる。
これがわからない。

おのれの過信から、人の命を奪ってしまう者がいる。
歴とした老人がである。
晩節を汚す。
なんて次元の問題ではない。
あんたの一生は、何だったのか・・・ということになる。

 * * *

立派な老人が、というからいけない。
故意、あるいは過失に関わりなく、何事も起こさなかった者こそが、立派な老人なのだ。
だから私は・・・
と言ってはいけない。
自慢になる。
美しくなくなる。

なまじ事件事故を起こすくらいなら、むしろ遊蕩に耽り、
惰眠をむさぼっている方がいい。
と言うくらいの立派さである。



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

さすがですね

パトラッシュさん

我太郎さん、
徒歩に切り替えられましたか。
それは、ご同慶の至りです。
その気になれば、車なしでも、生きて行けますよね。
そして、その方が、どれだけ健康に良いことか。

これからも、鳥撮りの傑作を期待しております。
その足と手で、私達を、楽しませて下さい。

2016/01/31 10:44:34

これからもよろしく

パトラッシュさん

彩々さん、
そうですよ。人生を楽しみましょう。
(何処かから、楽しみ過ぎですよとの、声も)(笑)
楽しむことを経て、人生を卒業するのだと、私はこう思っています。

尚、コピーして配るのは、やめて下さいね。
柄にもないことを言い、恥ずかしくて仕方ありません。

2016/01/31 10:38:42

同感頂きましてありがとうございます

パトラッシュさん

うきふねさん、
何時もブログを拝見し、思っています。
いい人生を送っていらっしゃるなぁと。
「うき」は「憂き」ではなく「うきうき」と楽しくだなあと。

知人の方、大事故に至る前に気づかれ、よかったです。

2016/01/31 10:32:44

門外漢ながら

パトラッシュさん

シシーマニアさん、
本文には書きませんでしたが、(字数の関係もあり)
シニアたる者、金欲物欲を離れた後は、世のため、人のために働くべしです。

私などは、それがないから、遊蕩にふけっているわけでして。
シシーマニアさんには、立派な方法がある。
ピアノ演奏を以って、皆さんの心を、楽しく安らかにすることが出来る。
これに励まない手はありません。
ミスがあったとして、それが何でしょう。
試験を受けるわけではあるまいし、皆さんに喜んでもらえれば、それでよろしいのではないでしょうか。
門外漢の、気楽なコメントではありますが・・・

2016/01/31 10:26:39

性格にもよる

我太郎さん

私は臆病です
また人に迷惑はかけれないとの思いが強いです
鳥撮りに明け暮れていて、反応の遅れ、目の衰えを嫌でも思わずにはおれません
まだ免許更新まで2年残していますが、昨年から運転は止めました
事故を起こす人はほんのわずかな人でしょうが、何時そのわずかな人になるやも知れません
止めて不便は感じていますが、生活に支障はありません
転ばぬ先の杖ですが、まだまだ本物の杖には頼りたくなく、日々歩くことに専念しています
自動車事故で犠牲になる人がいなくなる万全の自動運転車が出来るといいですね
私には買えないだろうけど

2016/01/31 08:46:39

偉そうなことは言えませんが…

彩々さん

今日の「パトラッシュが駆ける!」は、いつも以上に
大きく頷きました。
私の周りにもいる、こうしたシルバー世代の方に
コピーして配りたいくらいです。

>遊蕩に耽り、惰眠をむさぼっている

まさに、この通りのわたくしです。
今、やっとこれができるようなり、幸せです。

人生、大いなる力によって命を受け、死をもって
この世を卒業させてもらうのだと思ってますが、
シニア、シルバー年代になっても、それぞれのパワーの
違いなのか…、自分を見極める事が出来ない人が多いとも
思います。
自分に持たされた「量」と「質」を見極められないと
いうのは、残念な生き方だと思いますね。

2016/01/31 07:33:00

おはようさんです

うきふねさん

>人生ってやつは、卒業の連続だ。
その通りだと思います。同感同感です♪
いつまでも、叶わぬ思いに明け暮れている人を
見ると呆れます。私も入ってるかも・・
今年85歳超えの知人が75歳の頃、ガレージ入れを
誤ることが何度かあり運転免許証を返納されました。
とても潔いと思いました。
「人生ってやつは、卒業の連続だ」
私も、この言葉を忘れずに生きたいと思います^^

2016/01/31 06:33:22

信頼しているので、心に響きました

シシーマニアさん

晩節ですね・・?

来月ミニコンサートで、ショパンのバラードを弾く予定の私は、ちょっと気持ちが揺らいでいます。
こういったドラマティックな曲を、この年でまだ弾けるのか・・。
羽入君のフィギュアスケートで、皆の耳が聞きなれている、そんな曲を果たして老人が弾けるのか・・?

まあ、弾くんですけど。
今更、曲を替えるわけにもいかないし・・。

でも、師匠の批評眼を信頼している私は、ちょっとここで目が覚めて、少し真剣に練習しようという気になりました。

只この場合、ミスがあったところで傷を負うのは自分だけ、というところが、休むに似たり、的な話ではあります。

2016/01/30 23:03:14

いいですね・・・

パトラッシュさん

喜美さん、
結果良ければ、すべて良し。
旦那様、良い時に止められたと思います。
そうですよ。
海外旅行に行くなどして、人生を楽しまなければ。

喜美さんの、満ち足りた人生は、そのお顔を見れば、すぐにわかります。

尚、私は師匠なんかでは、ないのですよ。
一部の人が、勝手に、そう呼んでいるだけでして・・・
喜美さんまで、もう、やめて下さいよー

2016/01/30 19:29:21

色々

喜美さん

私も諦めが早いです
主人が60歳の時癌かもしれないと
がんセンターに入院した時 直ぐ仕事辞める事 主人に進めました彼は車以外に趣味もなく唯朝から車に携わっていました 私は社員でもなかったけれど頑固な主人は病気で弱気でしたから
賛成してくれ直ぐ経理士さんに手続き
してもらいました 所が癌でなかったの 其れは可哀想だ車の仕事ない 此れからは海外旅行に遊びに行こう日本でトラック見ることが可哀想と良く遊びまわりました 申し訳なかったのですけれど元気になってすぐからデフレで良い時やめたことになりました 車も違反したこともなく75歳でやめました

書いている本人が此れ師匠にだすことでないと後悔しましたけれど書いたものだから良いわと何しろ諦め早いです
あしからず

2016/01/30 17:03:25

函館の女(ひと)

パトラッシュさん

風香さん、
そんな、そんな・・・
私に最も似合わない言葉、それは「美しい」でありますよ。
せめて、見苦しくならないようにと、そればかりを留意しております。

2016/01/30 16:46:12

困ったことです

パトラッシュさん

ばばたまさん、
私の長々しい文を、何時もお読み頂きまして、ありがとうございます。

ニュースを見ると、腹立たしいことばかりです。
つい、書かずにいられません。
憤懣を、ぶちまけるのではなく、冷静に伝えらえないかと、そればかりを考えております。
そうすると、つい長くなってしまうのです。

2016/01/30 16:41:59

いいえ

さん

潔よくて、美しいです^^

意欲が強欲になり、絆がしがらみになるのが
人の世界でしょうね。

2016/01/30 14:16:19

すっきり!!

さん

パトさんのブログには、いつも読んでいくうちに引き込まれ、読んだ後はスッキリするんですね。
同じ思いを上手く書いて気持ちまでスッキリさせていただいて、これなタダなんですね〜。

2016/01/30 11:21:53

PR







上部へ