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吾喰楽家の食卓
飲んで食べて歩いた旅(2)
2015年10月25日
テーマ:生活
店の入口をまっすぐに進み、奥の席に陣取った。
座席数は、二十足らずの蕎麦屋だ。
表通りを背にして座ると、正面にカウンターがあり、その向こうで行き来している男性が見えた。
調理場だろう。
カウンターには、焼酎の瓶がずらりと並んでいた。
清酒もあるはずだが、見当たらない。
夜になると、飲み客が多い店かも知れない。
この辺りの住民は、清酒より焼酎を好むらしい。
カウンターの上の壁には、短冊に書かれた一品料理の品書きが貼ってあった。
アナゴ、ぶり、アジ、いわし、カキ、なまず、イカなど、魚の天ぷらが多い。
なまずの食べられる店は珍しいが、天ぷらで食べると、中々、美味しい魚だ。
ぶりとカキは、天ぷらで食べたことがない。
ぶりなら、焼くか、煮るか、刺身がいい。
揚げるのなら、カキはフライだろう。
“市内最大級のエビをご賞味ください”と、ビラが壁に貼ってあった。
何れにせよ、天ぷらには自信があるらしい。
そのとき、ある不安が頭をよぎった。
程なく、注文した『野菜天ぷら付きもり』が出てきた。
薄く延ばし、やや幅広に切った蕎麦を見た瞬間、味が想像出来た。
手繰って、ズズズッと啜りにくい。
蕎麦の表面に水気がないのだ。
天ぷらを揚げている内に、少し乾いたのかもしれない。
食べてみると、思った通り、茹ですぎたのか腰がない。
次に茄子の天ぷらを頬張った。
カラッとした食感は悪くない。
しかし、先ほど感じた不安が的中した。
本当にわずかではあるが、魚臭さを感じた。
エビなら、さほど気にならないはずだ。
そうではなく、青魚特有の臭いがした。
ところで、蕎麦を食べるとき、ズズズッと音を立ててもマナー違反ではない。
蕎麦の食べ方は、日本の文化と云っていい。
文化だから、他国からとやかく云われる筋合いはない。
空気と一緒に蕎麦を啜ると、蕎麦の香が立つのだ。
また、熱々の蕎麦だと、空気を吸い込むことで、唇の火傷を防げる。
音を立てずにチュルチュルと口に含み、モグモグ食べても、他人に迷惑をかける訳ではない。だから、それはそれで構わない。
でも、マナー違反でないからと、ズズズッと大きな音を立てると、周りはうるさくて堪らない。
ズゾゾゾ〜という感じで、控えめに音を立てるのが無難だ。
次は、大悲願寺へ向かった。
お喋りをしながら、先を急いだ。
「Pさん、今の蕎麦は百点満点だと、何点くらいですか?」
「八十点くらいかな。蕎麦の香が少なかったな」
「私は七十五点です。蕎麦を茹ですぎたのかも知れませんね」
本当は、七十点くらいと思ったが、Pさんが探した蕎麦屋なので、遠慮して五点おまけした。
「先ほどの車椅子のお客さんたち、どういう関係かな」
今度は、Pさんが訊いてきた。
「娘と孫娘ではないですか。わざわざ車椅子で来るほどの店ではありません。天気が良いから、奥さんの墓参りに行く途中でしょう」
「そうかも知れないな」
お喋りをしながらも、速足で歩いた。
真言宗豊山派の寺院で、『金色山 吉祥院 大悲願寺』が、正式な名称だ。
創建して八百年以上が経っている。
Pさんの若い友人が、将来、ここの住職になるらしい。
そんな縁で、近くに来たから寄ることにしたそうだ。
Pさんは、本堂と観音堂にお賽銭をあげ、丁寧にお参りをした。
私はといえば、小銭入れが、リュックサックの奥に入り込んだようで、中々、見つからない。
お賽銭は省略し、手を合わせただけで済ませた。
伊達政宗が所望したという白萩は、すでに花は終っていた。
SOYOKAZE家に着いたのは、Pさんが予定した午後零時三十分丁度だった。
急いで歩いた甲斐がある。
つづく
写真
伊達政宗・白萩文書(10月22日撮影)
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SOYOKAZEさんへ
あの店はアプローチに敷石があり、障害がある方は、入り難かったと思います。
近所方かも知れませんね。
車椅子専用の玄関とは、素晴らしい!
2015/10/25 08:49:41
SOYOKAZEさんへ
おはようございます。
今しがた、電車に乗ったところです。
確かに、このお店は、飲むのには良さそうな店ですね。
家族だけでやっているのかも知れません。
シニア夫婦と息子といった感じです。
2015/10/25 08:37:08
追伸
私の市には、福祉施設が多く、身体障害をお持ちの方、精神疾患の方、そして数えきれない程の特別養護老人ホームがあるのです。
だから、車椅子の方も多く、あの近所に住まわれていらっしゃるのかもしれませんね?
私が以前勤めていた料理屋では、いち早く、フラットなコンクリートの車いす用通路を一般のお客様が見えない、竹の中に作り、専用入り口もあるのですよ。
障害を持った方に優しい町かもしれません?
2015/10/25 08:13:19
Reiさんへ
おはようございます。
一口に蕎麦と云っても、太さ、色、硬さは色々です。
結局、好みの問題ですね。
今回の店、天ぷらの揚げ方は上手でした。
たまたま、蕎麦を茹ですぎたのかも知れません。
機会があれば、もう一度と思っています。
2015/10/25 07:57:38
名前を聞いた時
おはようございます。
師匠からのメールで、○屋で蕎麦をと・・
「あちゃ〜!」でした。
一度行きましたが、再び行こうとは思わない店。
しかし、近隣の独身シニア男性の支持を集める、昼から呑める居酒屋なのかもしれません?
男性お二人の旅の始まりは、蕎麦はともかく、清らかでしたね。
Saさんは、おにぎり一個持参で、我が家で召し上がっていましたよ。
2015/10/25 07:55:02
蕎麦屋
おはようございます。
P師匠と共に、楽しい旅ですね。
私も最近は、外で蕎麦を食べると、知らず知らずのうちに点数をつけるようになりました。
もう一回来たいとか、もう来なくてもいいかなとか…
旅はまだまだ続くのですね(^^♪
2015/10/25 07:16:16