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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空〜(十五)胸の疼きを抑え切れなかった 

2015年07月31日 外部ブログ記事
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二時間近く話し込んだ後、後ろ髪を引かれる思いで、彼は貴子と別れた。
その別れ際、彼は人目もはばからずに貴子を抱きしめた。
このまま別れてしまうことが、どうしてもできなかった。
胸の疼きを抑え切れなかった。

「貴子さんが、欲しい」
耳元で囁く彼に対し、貴子はきっぱりと告げた。
「だめ! 一時の感情に押し流されたら、だめよ。
私なんかに関わったりしたら、武士さんがだめになるわ。このまま別れましょう。
素敵な想い出として、残しましょう。
今日は、ホントにありがとう。嬉しかった、会えて。
それじゃ、サヨナラ」
彼の腕を振りほどくと、本降りの雨の中を、貴子は足早に立ち去った。
彼は、呆然とその後ろ姿に見入った。

ごめんね、ごめんね。
私だって、たけしさんに抱いて欲しいと思うわ。
でもね、でも、まだだめなの。たけしさんだけよ、あんな風に気楽にお話しできるのは。
武士さんならその隣でも座ることができるのよ。

他の男性では、まだだめなの。
どころか、おじさんですら…。
廊下を歩く音が聞こえただけで、身構えてしまうの。
申し訳ないと思ってるわ、何とかしなくちゃとも。

今ね、お医者さんに通ってるの。
できれば女の先生をと思うけど、いらっしゃらないのよね。
でも大丈夫。
森先生はお優しい方で、ゆっくりと時間をかけましょうって言ってくださるの。

帰る道々、貴子の心は揺れた。
ひょっとして治っているのでは、という期待にも似た感情が生まれもした。
しかし、無理は禁物です、焦っちゃ行けません。
その言葉が、貴子の重くのしかかっている。
一年二年と受けた傷です、それ以上の時を待たなければ、また…。

手紙を出そうか、武士さんなら分かってくれるはず。
待っててもくれるわよ。
そんな思いも、家に着いたとたんに消えた。

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