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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜 (十三) 待ってたわ、ミタライ君 

2015年05月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



十時を少し回った頃、彼は耀子のマンションに着いた。
耀子からの誘いとはいえ、時間が遅いことに少なからず、玄関ホールで彼は逡巡した。
電話をかけてからと、思い直した。

「待ってたわ、ミタライ君」
思いもかけず、耀子が現れた。
「下りてきて良かったわ。帰るつもりだったでしょ、ミタライ君」

彼の腕を取ると、耀子は急かせるようにエレベーターに向かった。
「連絡事項って、何ですか? まさか、パートナー復活じゃないですよね」
恐る恐る尋ねる彼に、耀子はケラケラと笑いながら答えた。

「あら、分かっちゃったあ? 実は、そうなの。な〜んて、言ったらどうする?」
「ええっ? そ、そんな今更」
慌てふためく彼をいたぶるように、耀子は彼の肩にしなだれかかった。

「ふふふ。嘘よ、う・そ! ミタちゃんに逢いたくなったのよ。
ふふふ。実はね、のぶこがさ。何だか、ごちゃごちゃになってるみたいでね。
のぶこを慰めてる内に、ミタちゃんに逢いたくなって」

「あのぉ、酔ってます? リーダー」
「もお、リーダーはやめて! 耀子って呼んで! さっ、入って」

部屋には、あの官能的なランバダの音楽が流れていた。
気のせいか、部屋の灯りも落とされているように思える彼だった。
大きなスタンドからは赤い灯りがこぼれ、ランバダの音楽にマッチしていた。

「どう、元気してた?」
耀子の腕が彼の首に巻き付き、耳元で吐息混じりの声が囁かれた。
そして耀子は、腰をくねらせながら棒立ちの彼を誘い始めた。

「ど、どうしたんですか?」
彼に答えることなく、耀子は大きく上半身を反らせた。
「あぶない!」

思わず彼は、耀子の腕をしっかりと掴んだ。
何とか耀子の体を支えはしたものの、耀子の激しい動きに勝てなかった。
そのまま耀子に引きずられるように、ソファに倒れ込んだ。

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