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独りディナー
自分の道を歩く友人
2015年05月07日
テーマ:思い出すままに
大学の頃に組んでいた、ヴァイオリンの友人。
気の強い人だったなあ。
でも言える事は、とにかく練習量が半端ない。
そして、揺らぎの無い自信。
大学に入りたては、誰もが希望に燃えていたけれど、その友人の未来像は、度を超していた。
次、次回のチャイコフスキー・国際コンクールまでには、あと6年位はあるから、それまでに、何々を勉強して、とか。
ピアノには、ショパン・コンクールというのがあるから、それだけチャンスが多くて良いわね、とか。
まあ、間違いではないけれど。
その当時の私には、それは単なる自信過剰に見えたし、形ばかり追いかけるよりも、地道に目の前を歩いた方が良いのではないかと、偉そうに彼女を諌めてさえもいた。
更に、自分の決めた道を行くためには、気後れすることなく扉を叩き続ける彼女に、私は感心するとともに、ある種のプレッシャーも感じる様になってきた。
何時の頃からか、コンビも解消した。
それでも学校の廊下や、道端で出会う旅に、彼女の自信のオーラには圧倒されていた。
そして、国内でのコンクールや、学内の卒業試験で、予想通りの結果が出せなくても、彼女にはいつも実力ではなくて、それ以外の理由付けがあった。
何年かののち、留学していた頃、何処かの国際コンクールで予選落ちした彼女が、審査の人に抗議をした、という噂が聞こえてきたりもしていた。
でも、それと共に、世界的の巨匠であるナタン・ミルシティンの内弟子になって、ロンドンで勉強しているという噂も聞こえてきた。
それから、数十年。
あるとき、彼女が東京でリサイタルを開くのをどこかで知って、聴きに行った。
当然ながら、学生時代とは違って、はるかにゆとりのある演奏ではあったけれど、音楽を手段に使っている印象は、正直否めなかった。
あまり、音楽に対する愛情のようなものは、伝わってこなかった。
でも、演奏が終わって帰る人達の一人が「一晩中でも聴いていたいなあ・・」と言っているのが聞こえてきて、嬉しくなり楽屋へ会いに行った。
それをきっかけにして、彼女が帰国するたびに電話をかけてくれて、近況報告などするようになった。
普段は、ロンドンに住んでいるという彼女は、まだ独り身ながらいつもパートナーはいるのだ、と言っていた。
「素敵な人だなあと思うと、私の演奏会に招待するの。ヴァイオリンを聴くと、必ず、私のほうを向くわよ」
相変わらずの、自信であった。
何度目かの帰国の際、
「今も、ロンドンに住んでいるの?」と訊いてみると、
「あら、言わなかったかしら。私、結婚して、今はニューヨークに住んでいるの」
「まあ、相手は日本人?」と間抜けに訊き返すと、
「○○○の副社長している人よ」と、アメリカでの有名な会社名を上げた。
そして、今日ユーチューブで、彼女の演奏を聴いてみた。
ロシアの素晴らしい若手ピアニストと組んだ演奏。
彼女の演奏も立派だったけれど、余りにもピアノの伴奏が鮮やかで、○○と組んだという事実が独り歩きしているようでもあった。
そして、彼女の人生は、自分の決めた道をぶれることなく自信を持って歩くことなのだ、とようやく納得がいったのだ。
きっと、夫になった人も、ヴァイオリンを聴いて彼女のパートナーとなった人たちも、その彼女の揺らぐことのない一途な気迫と人間性に、魅かれたのだろう。
見事な人生である。
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独特の輝きですね
吾喰楽さん、こんにちは。
私も、反対岸に立つ人間です。私の周りには、様々な理由で自信過剰の人が居て、反面教師になっているのかも知れません。
でも、今日はハタと、その友人の人となりがわかった気がしました。
友達と言える人は少ないかも知れませんが、わかる人にはその輝きが見えるのだと思います。
2015/05/07 13:50:04
自信過剰?
こんにちは。
高校の同級生にも居ました。
有言実行とも、云えるかもしれませんが。
私は、その反対の世界に住む人間です。
もっとも、劣等感の塊とまでは云いませんが。
2015/05/07 13:37:15