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パトラッシュが駆ける!

心ならずも (中) 

2014年11月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:テーマ無し

私は、他家を訪れるのが好きだ。
但し、どんな家でもと言うわけではない。
友人が誘ってくれたとして、彼は、その家の主だからいい。
問題は奥方だ。
これが酒飲みに、寛大であるかどうか、である。

早い話が、私の家だ。
はっきり言って、妻は酒飲みの気持を、忖度なんぞしない。
そりゃ、折り入って頼めば、そこそこの饗応は、やってくれるだろう。
しかしそれは、私が彼女に、借りを作ることに他ならない。
借りが積もれば、頭が上がらなくなる。
それならいっそ・・・
金で解決とばかりに、料理屋、居酒屋へ行くことになる。

ある友人宅を訪ねた時のことだ。
最近、近くに飲み屋が出来た。
気になるから、行こうと言う。
それで行ってみたが、格別に、変わったところもない。
飲み終わり、店の外で別れた。
想像するに、彼の家では、冷戦の最中もしくは、その余燼が、
くすぶっていたのではあるまいか。

友人が、一人住まいならどうか。
これは簡単だ。
彼が、その家の全権を掌握している。
招かれて、これほど気兼ねの要らないところはない。

このところ、語句氏とつるんで、出かけてばかりいる。
時には、その家に泊まりに行き、夜が更けるまで、飲んだりする。
これも、語句氏が一人住まいだからだ。

私の周辺では、近年、アリナミンが死に、山靴もその後、
覇気をなくしている。
重鎮は、大病から立ち直れないでいる。
友人三人を、相次いで失ったようなものだ。
しかし、私の人生は、よくよくついている。
すぐに代わりの、友人が現れる。
今回は語句氏だ。
彼は、私より六歳ほど若い。
だから、順当に行けば、そして、付き合いを間違わなければ、
私が良友を失うことは、ないであろう。

その語句氏とのコンビで、他家へ招かれる。
これが、このところ続いている。
招いて下さるのが、これも同じ、あるシニアのサイトのお仲間である。
本日の茶子さんも、その一人だ。
女性である。
二世帯同居だから、一人住まいとも言えない。
しかし、旦那を亡くされ、独身であることは確かだ。
だから、気兼ねがない。
だから、お呼ばれに応じている。

インターフォンを押したら、ドアが開き、語句氏が顔を覗かせた。
「いらっしゃい」
彼は、身体がでかい。
従って、顔も大きい。
先に来たくらいで、やけに落ち着き払っている。
もう十年も、この家に住んでいるような、そんな顔をしている。

 * * *

お好み焼きが美味い。
茶子さんは、関西の出身であり、だから、関西風ということになろう。
三つ葉を散らした、つゆに付けて食べる。
ビールに合う。
実に美味い。

程よく焼けた、ローストビーフがある。
やきとりがある。
名前を知らない料理が、何品もあり、トマトの赤、豆腐の白、
ブロッコリーの緑と、色鮮やかだ。
多国籍料理ですからと、茶子さんが笑う。
「ネギ焼きを、三枚も重ねて食べたら、あかんよ」
彼女は、時に関西弁を交えつつ、からからと笑う。

ビールを終え、ワインに替えた。
肉にはやはり、赤ワインがいい。
語句さん持参の、秩父の地ワインを空け、続いて、イタリア産にかかった。
かの名門、メディチ家に由来するワインだそうだ。
スパークリングとは、発泡のことであり、これを、
ちびちびやってはいけない。
豪快に飲む。
私達は、たちまち瓶を空にした。
この辺り、私達には、勢いがある。
当たるを幸いなぎ倒し・・・の感がある。

茶子さんも、エリー嬢も、酒が強い。
女性にしては、ではない。
柔な男を、顔色なからしめるほどに、である。
「わたしなんか、ウォッカで産湯を使ったんだから」
エリー嬢は、何時もこう豪語する。
語句氏と私は、これまでの付き合いで、彼女らの酒の強さをよく知っている。
だから、余計なことは、決して言わない。

本日、女性陣には、もう一人が加わっている。
初お目見えの、同じサイトの、お仲間である。
その彼女が、よくわからないことを言う。
「私は、三杯しか飲めません」
酒には種類があり、強弱があり、酒器もまた、
大はジョッキから、小は猪口まである。
自律しているのか、それとも、余儀ない事情があるのか、
それも分からない。

「今日は、ドキドキして、ここに来ました」
一語一句を、確かめるように言う。
カ行の発音が、特に力強い。
彼女に、早口言葉は向かないであろう。
「生麦生米生卵」
これを言うのに、NHKの有働由美子アナウンサーの、
優に倍は、時間がかかるだろう。

その語り口が、女優の吉行和子さんに似ている。
「いや私は、片平なぎささんに、似てると言われました」
当人は言うけれど、これに、はいそうですかと、
頷くわけには行かない。
当人の主張には、願望が入るからだ。

私だって、先代のブッシュ大統領に似てると言われたことがある。
そして、自分では、IPS細胞でノーベル賞を取った、
かの山中伸弥教授にも、似ていると思っている。
しかし、誰も言ってくれない。
せめて、おでこの辺り、髪の生え際だけでもと思うのだが、
それすらも、言ってくれない。
きっかけさえあれば、私の方から、それを言ってやろうと思っている。

ベランダの彼方に小山が見える。
その上に、青空が澄み渡っている。
昨日の雨が、ウソのようだ。
「今日は、いい天気だねー」
思わずつぶやいた。

そうしたら、吉行和子さんが、すかさず応じた。
「私、晴れ女なのー」
カ行の音がないからだろう、こんな時彼女は、素早く言う。
「私もー」
「私もよー」
茶子さんと、エリー嬢が追随した。
男二人は、黙っている。
我先に争っては、はしたないと言う頭がある。

女性と飲む。
それも、みめ麗しい、お三方と飲む。
さらに、青空を仰ぎながら飲む。
「酒は美味いし、ネエちゃんはキレイ」
つい、歌を唄いたくなる。
二十年前に、皆さんにお会いしていれば、もっと良かったと、
しみじみ思う。
                     (続く)



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何時か・・・

パトラッシュさん

ウィールマンさん、
お読み頂きまして、ありがとうございます。

ウィールマンさんが、帰日の際は、皆で歓迎宴をやろうという案も、出ております。
(ただし、航空券は、お送り出来ませんが)

2014/12/02 14:33:46

パトラッシュさん

ウイールマンさん

大変楽しく読まさせていただきました。

またまた次回が楽しみです。有難うございます。

2014/12/02 09:36:34

相変わらずやっています

パトラッシュさん

喜美さん、
お近くでしたら、お招きしたのですが・・・
喜美さんの声が、聞きたかったです。

お好み焼き、おいしかったです。

2014/11/29 15:33:21

楽しそう

喜美さん

相変わらず楽しそうですね
病弱で仲間いりできないのが残念です
飲めなくてもお喋りは負けませんから

お好み焼きも食べたかったなー
次のお便りも楽しみにしています

2014/11/29 13:15:32

楽しかったです

パトラッシュさん

彩々さん、
おはようございます。

ネタ(登場人物)がいいので、つい長くなりました。
肝心の、白州12年物に、話が及んでおりません。
もう一回、書きます。
Pocoも書きたいけれど、字数の関係で、どうなるか・・・
(ただでさえ、長いので)
酔っ払いの仲間に、加えないでよと、彼女怒るかな・・・

30年前に、お目にかかりたかったです。本当に・・・
人生を、狂わせても・・・(笑)

お出かけですか。
西湖は、静かな湖ですね。
富士山は、当分大丈夫でしょう。
楽しんできて下さい。

2014/11/29 08:53:34

いえいえ

彩々さん

おはようございます。

「中」ですか〜。
「下」も楽しみです。
笑いっぱなしで、読ませていただき
Soyoさんと同じく、最後のつぶやきに反応。

>二十年前に、皆さんにお会いしていれば、もっと良かったと、しみじみ思う。

いえいえ、20年じゃ効きません。
30年前の30歳代までさかのぼっていただきゃなきゃ!

PS:今日は陶芸仲間と毎年のように行っている
キャンプ(通称:焚き木の会)で西湖へ行ってきます。アメリカのトレラーハウスが並んだキャンプ場
なんですよ。総勢8人で2台に別れ寝ます。
富士山がおとなしくしてくれることを祈っていてください。

2014/11/29 06:03:56

感激

パトラッシュさん

吾喰楽さん、
ドアを開けた時の顔は、一家の主、そのものでした。
おや、何時の間に・・・と思ったものです。

ネギ焼き、そうでしたか。
美味かったです。
卓上の料理、すべてが美味かったので、感激のしっ放しでした。

2014/11/28 21:06:43

同じ三杯でも

パトラッシュさん

マリーさん、
その発音は、直さないで下さい。
”らしさ”がなくなります。
吉行和子さんらしさです。

次はもっと、大きなグラスにしましょう。
それでもって、三杯にしましょう。

2014/11/28 21:00:51

危ない

パトラッシュさん

SOYOKAZEさん、
今回で終わるつもりでいたのですが、
書き始めたら、長くなり、もう一回追加することにしました。
そうでないと、白州のことが書けないからです。

二十年前にお会いしていたら、確かに危ないですね。
今だって、ぐらぐらよろめいているのですから・・・
ええ、もちろん、皆さんの美貌にです。

2014/11/28 20:55:33

乞うご期待

パトラッシュさん

風香さん、
一応、後篇があります。
また来週になりますけど・・・
小出しにして、ずるーいと言われるのですが、
なにせ、長文になるもので・・・

2014/11/28 20:50:27

語句です

吾喰楽さん

楽しかった、一日が甦ってきました。
ほとんどノンフィクションですね。

エリー嬢のお土産の焼き鳥、美味しかったですね〜
三枚重ねのネギ焼きは、私が焼いたんですよ。

前の晩から行っていると、主みたいになるんですかね〜
嘘、嘘、嘘ですよ。
当日の9時ころに行って、お手伝いをしていました。
正確に云うと、ビールを飲みながら、味見をしていました。

2014/11/28 18:57:53

そうです か !

さん

カ行の発音が強い者です。
自分では気づきませんでした。

物書き四天王にお目見えするなんてとっても恐れ多くて喉がカラカラになり3杯以上呑んでしまいました。

いつも「君は3杯までしか呑んじゃだめだよ」と言われてたけれど、茶子さんの美味しいお料理と皆様のお持たせのお酒類が高級であるのと四天王のトークが軽妙でしたのでちっとも悪酔いしませんでした。

下もあるのでしょうね。

2014/11/28 17:55:11

今だからこそ

さん

あの日の情景がそのまま浮かんで来ました。
ドアを開けたら、まるで主人のような顔をした語句さんが飛び込んで来たのも同じです。(笑)

明石風お好み焼きは、生まれて初めて食べましたが、ふんわりした生地と、つけ汁の上品なお出しがベストマッチで美味しかったですね〜!

しかし、師匠もさすが兵、あれだけお飲みになって記憶力は素晴らしいです。^^

但し、二十年前にお逢いしていたら、人生変わってしまったかも?
なんせ、我々女性陣は女盛り、如何に謹厳実直な殿方二人でも・・・(笑)

2014/11/28 17:06:06

(中)があるから・・

さん

続きを期待しています。

臨場感あふれる、解説者のようで、
とても楽しかったです。
ありがとうございましたm(__)m

2014/11/28 15:25:04

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