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人生いろは坂

地球一周の旅から10年(3) 

2014年11月04日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 10年と言う歳月は長い。それだけに記憶にもいささかあいまいなところもある。お許しを頂きたい。
但し、10年と言う歳月が過ぎたからこそ語れるものもある。洗練された記憶だけが残るからである。

 さて、船の名はトパーズ号、西大西洋を航海していた船で、ヨーロッパとアメリカの間を行き来して
いた外航船だったらしい。同じタイプのものが三隻建造され、その内の二隻は既に廃船となって
スクラップになったらしい。いずれ、このトパーズ号も、その運命にあるとのことであった。事実、
私たちが乗船し数回の航海後には、新しい船が採用されている。

 しかし、豪華客船とは言えないまでも、それ相応の客船であったことは船内の至る所に残っていた。
船内設備の多くに金メッキが施されていたり、共有スペースにもスポーツバーやトレーニングルームなども
あって、長い航海を退屈させないようになっていた。むろんステージ付の大きなホールもあった。

 船体は白く塗られ、スマートな船体は豪華客船に見えなくもなかった。ただ一つ、他の船と異なって
いたのは、その白い船体に大きく英語でピースボートと書かれていたことであろうか。

 老朽船は様々なトラブルが生じた。トイレがつまり通路にまで水があふれたり、大雨が降ると雨漏りが
していた。船体は停泊するたびに塗装が施され、壊れた甲板の板は張替が行われていた。しかし改造も
なされていたようで横揺れ防止のスタビライザーが付いていたり、操舵室には古い装備を残しつつ
最新式の装備も施されていた。

 乗組員には東南アジア系の人、東欧圏の人、高級船員はギリシャ人、食堂にはインドネシアの人や
調理場にはインドの人などいて、職種によって人種が分かれていたようだ。専属のバンドはロシア人
グループだった。大学などを卒業した一流のアーティストもいた。

 幾つかの港に停泊したとき船内でイベントが行われた。その時には現地の人達が乗り込んできて
民族音楽や踊りなどを披露してくれた。乗船していた若者の多くは現地で企画されている交流会へ
出かけ、私達のように観光を目的にしているものはオプショナルツアーに出かけた。大抵は日帰りか
一泊二日の行程であった。

 入港前には説明会が必ず行われる。ピースボートスタッフのトップであるクルーズディレクターが
挨拶に立ち、その後、現地の様子についての説明がある。そしてオプショナルツアー毎に分かれて、再度
詳細な説明があって、その日は散会となる。

 大抵は日帰りなので、さしたる旅行準備も必要ない。早朝、船が港に入ると税関の船が来る。税関の船は
私達のパスポートを検閲して帰る。パスポートはツアー会社であるジャパングレースに預けているので
私たちが立ち会う必要はない。ちなみに船は早朝に入港し、その日の夕方か夜遅く出港することが多かった。
理由は停泊料金のようであった。

 ちなみに、私達の旅行を世話してくれたジャパングレースと言う会社はピースボートと一体の会社である。
ピースボートはNGOで営利団体ではないので、旅行関係のことは全てこの会社に任せている。従って
ピースボートからジャパングレースへジャパングレースからピースボートへと社員の行き来も多い。

 ジャパングレースが船の賃貸契約をし、ピースボートに提供している。ピースボートのスタッフは主として
旅行中のイベントや水先案内人と称する講師などを招待し、様々な講座を開き、ワークショップを行っている。
更には通訳を兼ねた英語やスペイン語の教師もいる。こうした人たちもピースボートスタッフを陰で支えている。

 さあ、入港後のその時が来たら船内は大賑わいである。下船前にIDカードのチェックを受けて、いよいよ
現地の土を踏む。港には多くの観光バスが待機している。それらに分散して乗れば出発だ。船の旅は実に快適だ。
慌ただしくバスや電車を乗り継ぎ、空港へたどり着いたら長い時間待たされて、やっと出発と言うことがない。

 ホテルの玄関からいきなりバスに乗っての出発のようなものだ。しかも、そのホテルは目的地のそう遠くない
ところへ停泊している。観光地によっては、すぐ側だと言うことも少なくない。帰ってくればその日の夕食は
準備されていると言った具合である。特に主婦の皆さんにとって、この上ない極楽である。

 船旅の良さはこうした便利さの他に入港前に明け方の薄明かりの中に島影や街明かりが次第にはっきりと
見えてくる雰囲気が良い。いきなり雲の上から空港に突入とは全く異なる情緒がある。出港の時も同じである。
交わされた紙テープがちぎれるまで陸と船とは結ばれている。汽笛を鳴らして出港する。街明かりが遠くなる。
全ては映画の一シーンのようである。

 それはアフリカのケニアに着いた時のことである。時間は現地の通勤時間帯。水路をゆっくりと遡っていくと
盛んに通勤客が小さな連絡船を乗り降りしている。私たちは、ビルの7、8階に相当する上甲板で朝食をとっていた。
遠くにまだ見ぬアフリカの大地が黒いシルエットになって見えている。朝の太陽はすでにさんさんと輝いている。
デッキを吹き抜ける風は爽やかである。これが船で旅する雰囲気である。言葉では表現できないワンシーンである。

 次回は第二番目の寄港地ベトナムに付いて書いてみたい。

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