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パトラッシュが駆ける!

困ったもんだ 

2010年06月11日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


「大人の休日フリー切符」が発売された。
12000円で、JR東日本の全路線が、三日間乗り放題になる。
安い。
これを使わない手はないから、今年もまた、アリナミンと山靴、
それに私の三人で、旅に出ることになった。


三人がん首を並べ、みどりの窓口へ、切符を買いに行くのが慣例だ。
そしてそこで、一悶着起きるのも、例年のことになっている。
今年は、アリナミンが、会員カードを持たずに来た。
「家中探したんだけど、見つからないんだ」


念のため、三人でアリナミンの財布を点検したが、なるほどない。
「これなら、ある」
「代理購入証明書」なるものが見つかったので、それを窓口に呈示し、
事なきを得た。
仲間が一人、切符を購入出来ないとなると、旅そのものが、危うくなる。
手回しよく、宿だってもう三人分、予約してあるのだ。


窓口の女性が、心配そうに言う。
「紛失届けは出しましたか?」
「いや、家の中には、あるはずなんで」
「クレジットカードになっていますから、ご注意下さい」
つまり、落としでもしたら、大変なことになる。
「まあ、大丈夫でしょう」
アリナミン、切符さえ手に入れば、もう平然たるものだ。
窓口嬢の忠告もどこ吹く風、馴染みの居酒屋へと、真っ先に歩き始めた。


彼、よく言えば、少々のことには、動じない。
悪く言えば、物事に鈍感になっている。
私は、こう言う人と一緒に、旅に出なければならない。
今回が、もう最後かも知れないな・・・
実を言えば、去年、こう思った。
その前の年にも思った。
今年も、思っている。


 * * *


「大家さーん」
慶介が駆け込んで来た。
夜の十時を過ぎている。
車を貸してくれませんかという。


「一体どうしたの?」
「バッテリーが上がってしまいました。ええ、オヤジの車です」
「お父さん、来てたの?」
「はい、届け物をしてくれまして、
これから千葉へ帰ろうとしたところです。
そうしたら、エンジンが掛からなくなってしまって」
「押してやろうか?」
「今は、オートマだから、押し掛けは出来ません」


仕方ない。
私が車を出してやり、鼻先を合わせるようにして止め、
バッテリー同士を、コードで繋いで、エンジンをかけた。
通行人が、皆ジロジロと見て行く。


「用意がいいですね、コードを持っていて」
「先日も、これが役立ちました」
「あのねえ・・・」
お父さん、バッテリー上がらせの、常習者のようだ。
道理で慣れた手つきであった。


それでも首尾よく帰路に就き、こちらも一安心。
私は車を車庫にしまった。
一方通行路を逆向きに止めたから、車をバックさせたり、向きを変えたり、
それはそれは、面倒くさい車庫入れになった。
こんな時に、パトカーでも来たら、どうなるか。
10時を過ぎて、私は既にビールをくいと、やったところだった。
お父さん、途中で何が起きても、私はもう知らない。


* * *


「強くなりたい気持は、おありなんですよね」
「そりゃ、もちろんです」
「強くなるには、実戦を数多くこなすこと、それに本を読んで、
勉強することも大事です」
「それが、忙しくってねぇ・・・」
「出来るだけ、碁に接する時間を多くして下さい。
例えば、今日のような例会には、早めに来て、散会まで居ることです。
他人の対局を見学するだけで、勉強になりますから」
「そうですねぇ・・・」
と言ったくせに、Yさん、誰よりも先に、帰って行った。


女は教えにくい。
これは、私ばかりでなく、碁を指導する、多くの者が言うことだ。
「怒れば拗ねるし、叩けば泣くし、殺しゃ恨んで化けて出る」
女の扱いにくさを歌った、こんな都都逸があったと思う。
Yさんに対して、私はどう指導したらよいか、悩んでいる。
毎月の例会には、欠かさず来るのだから、
まんざらやる気がないわけではないのだが。


「ツケにはハネよです」
「えっ?」
「だから、相手が石をつけて来たら、ハネ返すのが原則です」
「すみません、耳が遠いもんで」
「補聴器は?」
「付けてます。これ50万もしたんですよ。でもあまりよく聞こえなくて」
「この前差し上げた、囲碁格言集は、お読みになりましたか?」
「すみません。忙しくって、全部は」
彼女、ああ言えば、こう言う。


「断わればいいじゃない」
妻は、あっさり言う。
同世代の同性に対しては、彼女、厳しいところがある。
Yさんに色気でもあったなら、もっと大変だろう。


「あなたは、誰にでも、いい顔をし過ぎるのよ」
そう言われたって、仮にも、私を頼り、碁を習いたいと、
やって来た人ではないか。
しかも女性である。
私は、女を振るのは、苦手中の苦手なのである。
それで結局、こんな人生を歩んでしまっている。


今日は、第二金曜日、我が西荻碁宙会の例会日だ。
いっそ来なければいいのだが、Yさん、きっと現れるだろう。
「遅くなりました」と言いながら、全然悪びれずにだ。
そして、暫くすると、ワタシ腰が痛いの、時間がないのと、
騒ぎ出すに違いない。


私はこのところ、少々困ったことになっている。
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