+++衣服を通して体温が伝わって来た時、若い女の
匂いが鼻をくすぐった。ちゃんとバイアグラを持参し
ていて、良かったーーー。
40.それから
それから、二週間に一度会うようになった。女は自
然に私を「先生」と呼ぶようになり、私は女を「スワ
さん(Swan=白鳥)」と呼んだ。
女はおしゃべりが好きで、昼の食事が終わっても毎
回レストランで私と長い時間おしゃべりをしたがっ
た。
他方、保健体育の授業時間が待ち遠しい私は、早く
ホテルへ行きたがった。話の途中でそれを言うと、
「未だ早いわ、お話が終わってからよ」と私をじら
せた。アレはおしゃべりが終わって、外にヤル事がな
くなり手持ち無沙汰になったら、モジモジしながらヤ
ルもんだと、私はこの歳になって初めて学んだ。
程なくして、私はパトロン探しのマネージャー役を
開始した。自分のライバルを求めるようなものであっ
たが、約束だったから仕方がない。どうせそれが必要
悪ならば、自分が選定した男を、女にあてがう方がま
しと考えた。
了解を得て、私はアールグレイの名を借り
て影武者となり、ネット上で女になりすましたので
ある:「私はバレリーナ、芸術に理解のあるパパさん
求む! 出来れば五十以上」これを掲示板に載せた。
本当は六十五以上、いや、七十以上が理想的と書き
たかった。そんな歳の方が案外自由なお金がある。い
や本音を申せば、その歳ならバイアグラの助けがあっ
ても、アソコはもう使いものになるまい。だから女を
不必要に汚さなくても済む、という私の姑息な思いが
ある。魅力的な女だから、外部はともかく体の内部だ
けは私一人で独占しておきたかった。
けれども、それは無理な話と気付いた。何故なら、
七十以上なら先ずネット自体を端からやらない人が大
部分だろう。となると、掲示板を閲覧さえしない。不
便なもので、世の中はこっちの思惑通りには行かな
い。仕方なく、資格を五十以上とした。
兎に角、掲示板には先の私の場合のように、セフレ
求むなんて下品な文言は一言半句も使わない。パパさ
んとしたのは、上手い表現だ。何せこっちは女なのだ
から。これは面白い体験になった。
掲載した翌日から応募者が殺到したから、まず
驚いた。近隣都市の人口が一挙に倍増したのかと怪
しんだ位だ。バレエをする女は、こんなにもてる
のか!? 元々、私もそれに引っ掛かった口だから、
今更他の男どもの助平根性を笑えた義理では無かった
のだがーーー。
(比呂よし)
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