+++「アハハ、手持ち無沙汰だなんて、貴女が先に
言った んだぞ!」
「ウフフ、そうだったわ。お互い、おウマさんが合い
そうね」
十五.ワレが一番
「でも世の中って、クラシックと規制が普通なんです
よねーーー。社会に出て私も慣れて、だんだん普通に
なって来ましたけれど」
「普通が良いと思うがね。セックスは相手を理解する
便利な道具と言ったのは、芸術系の人達に特有な考え
じゃないのかな?」
「ですけれど、芸術は元々発想が自由でないと良い作
品が出来ないですし、規制や枠を嵌めていては新しい
ものは生まれないわ」
セックスに対する柔軟な態度と、個人的な幸福感の
間には、積極的な相関関係が認められるというのを私
は何かで読んだ事がある。既婚者の方が未婚者より幸
福度が高いという調査結果も有るらしい。それを思い
出した:
「なるほどーーー、自由な発想というのは会社の経営
にも生かせそうだね。越後の超まじめで枠に嵌ってい
た学生が、芸術大学の自由な雰囲気に触れて、花開い
たって訳かーーー。経営者も、芸術大学で勉強したら
良いかもしれないよな」
「ウフフーーー、そうかもよ」
女には変に謙遜するところが無かった。普通の人と
感覚が少し違うように感じたから、指摘すると:
「ええ、私は出来るだけ謙遜しないことに決めてい
ます。美しいねと言われると、みんなそう言うわ、と
応える事にしています。ダンスを批評されて「足が高
く上がるね」と言われると、「ええ、このグループで
は一番高いかも知れないわ」と応えます。仮に、それ
が本当でなくてもよ」
「なるほどーーー」
「「いいえ、そんなに美しくないわ」とか、「脚が高
い踊り子は他にもいるわ」と応えるのは間違いよ。謙
遜のクセが過ぎると、育つ才能も遠慮して育たなくな
ります」
「なるほどーーー、判る気がする」
「出来るとか美しいと思い込んでこそ、自信が持てて
出来るようになりますし、本当に美しく見えます。 絵
でも音楽でも、名のある芸術家で遠慮している人なん
ていませんよ。モーツアルトも例外じゃないわ。み
んな、ワレが一番、ワレが一番ーーよ。売り込みの為
に少し醜い位ーーー」
(つづく)
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