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作品名 アカンタレの話(12) 評価 評価(1)
タイトル アカンタレの話(12)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/01/07 10:33:25

+++途中で私が逃げ戻りはせぬかと監視している
風に感じた。目をじっと私に当てたまま女の顔はニ
コリともせず、一言も言葉を発しなかった。背も低
く体力に自信が無かった私は息が弾み、次第に過酷
な山登りになっていった。
 
12.意地悪
 他人の為に一休みするという言葉を、小二の女は
知らなかった。もっともこれは後で考えると、女を
責めるべきでないかも知れない。

 こっちには確かに山登りという大仕事だったが、
女にすれば毎日通い慣れた通学路でしかない。何
の珍しい事があろうか。途中で一休みして道草を食
うなんて、思いも付かなかったろう。「真っ直ぐに
「速足で」帰って来い」と、女の親もきっと娘へ口
酸っぱく教えていたに違いないだろうから。

 体の辛さで殆ど口を利けなかった。それでも時々
短く「あと どれくらい?」とだけ、繰り返した。
女は「もう少し」と矢張り手短に応えるばかりで、
ともすれば私との距離を開けようとする気配さえあ
った。幾ら登っても、一向に茶店の気配が無かった。

 にこりともせず始終女の口数が少ないのも、気に
なった。優しくないのである。初めての山道であり、
疲労の上に何時までも茶店が見えない心細さが重な
り、自分は「女に騙されているのではないか」と、
次第にそういう気がしてきた。

 私は苛めっ子にぶたれて泣かされる事はあったが、
女の子にそうされた事は無い。女の子は、特に上背
のある子は何か母性を思わせて、心優しいものと信
じていた。
 けれども同時に、一旦気に入らないとなると、女
の子の苛め方は手を出さない分底意地が悪く、むし
ろ男の子より陰湿で残酷である、というのを子供心
に私も薄々気付いていた。

 自分は女に、今そんな目に逢わされているのでは
ないか? その内に道の判らない処へ連れ込まれて、
そのままほったらかしにされるーーー。自分の死活
が、女の手に握られている気がした。

 そう言えば、口を利いたのは今日が初めてで、女
の素性や性格をこっちは未だ何も知らないのに気付
いた。顔は綺麗だが、一皮剥けば最も邪悪な本性を
隠してあるに違いない。笑いを見せないのがその証
拠だ。そう想像すると、急に不安が募って来た。
(つづく)

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