自転車で物語散歩

「漱石 マドンナの坂」シリーズ(6) -『こころ』 12- 

2011年12月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

今回の『こころ』シリーズは、今日で一区切りにしたい。また、折があれば、続編を綴ってみたい。というのも、このマドンナ坂シリーズは、【漱石・マドンナの坂地図】にあるように、青い四角でくくった小石川・牛込・本郷の内側を歩くことを眼目にしている。そのため、その枠から外れた神田や銀座や上野方面などはふれていない。たとえば、『こころ』でも、"私(先生)"とKくんは池之端方面を散歩するし、"私(先生)"と奥さんとお嬢さんたちの、銀座での楽しい買い物場面もある。「二人は別に行く所もなかったので、竜岡町から池(いけ)の端(はた)へ出て、上野の公園の中へ入りました」「三人は日本橋へ行って買いたいものを買いました。買う間にも色々気が変るので、思ったより暇がかかりました。奥さんはわざわざ私の名を呼んでどうだろうと相談をするのです。時々反物をお嬢さんの肩から胸へ竪(たて)に宛てておいて・・・」上のようなコースを探ってみてもおもしろかろう。また、"私(先生)"と"私"の歩いた後を追うだけでも実のある物語散歩となることうけあい。さらに、今回のシリーズでは、、"私(先生)"と"私"の家がどのあたりにあるのか、詳らかにしていない。これには、ちょっと悔いがある。が、筆者はその場所を、"おっっつ、ここだ、このへんだ" と決め込めるほどには、『こころ』を読み込まずにいる。そのあたりは、ズボラな我が身に鞭打って、ぜひとも探索したい。さて、年末も近づいたせいか、『こころ』での探索散歩のやり残しを、言い訳がてらつらつらと並べたが、今日はふたつのことを書いて、まとめのようなものとさせていただく。ひとつは、"下町はどこか?" ふたつめは"雑司ヶ谷霊園"だ。では、さっそく下町について、自流解釈をざっとだが打ってみる。『こころ』シリーズでは小石川植物園がちっとばかり顔を出した。植物園は江戸の小石川養生所の跡地だ。江戸も瓦解近くのころであろうか、この養生所の内科医に小川顕道なるお方がいたようだ。この小川さんは、こう言っている。「われら二十歳頃までは、白山、牛込辺りの人、神田辺あるいは日本橋へ出る節は、下町へ行くの、家来を下町へ使いにやりたるなどという」いま、東京の下町とくれば、普通はどのへんをおもいうかべるであろうか。下町風俗資料館や上野に浅草で賑わう台東区、両国あたりの江戸東京博物館、それに深川江戸資料館や門前仲町や富岡八幡宮で名をはせる深川の江東区、はたまた江戸スカイツリーなる日本一の鉄塔が建ってきた墨田区、などか。しかし、小川さんはいう。「浅草近辺のものは、神田、日本橋へ出るをば江戸へ行くといいけり、山の手、浅草辺は、近頃下町へ行くという人絶えてなし・・・」どうであろうか。筆者は常々、おもっている。江戸と現在では山の手と下町を耳にして描く地図はまったく違うと。いわば、上野や浅草ですらが下町ではない。下町は、あくまでも江戸城の東にある日本橋や神田なのである。そして、山の手はお城の西の麹町(番町一帯)が主で、牛込や白山(小石川)などが山の手の端くれであった。そして、大川(現隅田川)を渡った深川や両国は、商人で賑わう下町(日本橋・神田)とは一線が引かれた職人の住む地域、現代風にいうならば都心に通うサラリーマンが根城となる新興住宅地、それが今の人々が下町と聞いてパッと思い浮かべる地区ではなかろうか。下町と山の手について、筆者は以上のような区切りをもっている、ようは、筆者にとって下町とは日本橋や銀座あたりで営みを続けている商店であり、呉服問屋に毛の生えた(おっと、失礼)三越デパートなどが並ぶ中央通りなのである。ゆえに、昨今の雑誌や新聞がもてはやす下町(上野・浅草・深川・両国)は、下町もどきだとおもっている。以上は、あくまでも地理的な区切りであり、江戸文化の広がりをいっているのではない。つまり、大川(隅田川)の向こうの江東区や墨田区は下町ではないと断言するのではない、あくまでも江戸の末期や明治初期の人々にとり、下町や江戸は日本橋や神田界隈だったということをいいたいだけだ。よって、漱石先生の頭にも日本橋あたりで買い物をするときは江戸へ行く、そんな意識があったのではないかとおもっている。たとえば、漱石先生のご自慢のひとつは、"俺は、江戸っ子だ" である。が、そのへんの仕切りきちんとしていて、こんな釘を自らに刺している。「僕はこれでも江戸っ子だよ。しかしだいぶ江戸っ子でも幅のきかない山の手だ、牛込の馬場下で生まれたのだ」幅のきかない江戸っ子、それを、あえて自慢にする漱石先生、このへんの見えぱっりがは実に江戸っ子らしいとはおもう。おっと、ひとつめの下町へのこだわりで字数がつきてしまった。ふたつめの雑司ヶ谷霊園は、次回ということで・・・。■本日もお立ち寄りありがとうございます。※次回は、『こころ』の最終として、まとめのニの予定です。

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