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読書日記
『振り出し』 読書日記345
2024年03月14日
テーマ:読書日記
上田秀人『振り出し』中公文庫
書店で「旗本出世双六」という副題(シリーズ名)がある新シリーズを見つけた。著者は近年「百万石の留守居役」シリーズや「禁裏付雅帳」シリーズに終止符を打ち、代わりに「隠密鑑定秘禄」シリーズ、「武商繚乱記」シリーズを書き始めたが、また新しいシリーズが加わった様だ。
内容案内では
文政六年、いじめに耐えかねた西丸御書院番二番組の新参・松平外記が三名の古参を城中で斬り殺す大事件、いわゆる「千代田の刃傷」が起きた。幕閣が混乱する中、二百二十五石の小旗本で無役の小普請組・北条志真佑は、番士を一新し再編成された二番組に抜擢され、妹の幸や叔父の相模八左衛門とともに喜んでいた。上泉新陰流を使い、十一代将軍徳川家斉の世子・家慶の力にならんと腕を撫す志真佑だったが……。待望の新シリーズ始動!
となっており、シリーズ名と本書題名から、主人公が次第に出世していくであろうことは確かであるが、果たして「上り」はまさか老中ではないであろうから、どの役となるのであろうか?
ところで、現在著者が続けているシリーズを順不同に列挙すると「日雇い浪人生活録」(ハルキ文庫 15巻)、「隠密鑑定秘録」(徳間時代小説文庫 3巻)、「高家表裏譚」(角川文庫 7巻)、「勘定侍柳生真剣勝負」(小学館文庫 7巻)、「惣目付臨検仕る」(光文社時代小説文庫 5巻)、「武商繚乱記」(講談社文庫 2巻)、それに本シリーズと7種類すべて異なる出版社から出ていて、各出版社による売れっ子作家の争奪戦が見てとれる。なお、中公文庫はこのシリーズの前は「闕所物奉行裏帳合」シリーズ(6+1巻)を出していた。
だからと言えるのかどうか・・いずれもそれなりに面白いし、舞台というか主題もそれぞれに異なっているのであるが、いずれも説明過多と言える背景描写が多く、ストーリー自体はなかなか進展しないという特徴がある。時によっては毎月の新刊、遅くとも2ヶ月待てば新しいものが読めるのは読者としてはうれしいものだが、作者の疲労度を心配せざるを得ない。
(2024年2月21日読了)
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