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読書日記
『あなた』 読書日記326
2024年01月30日
テーマ:読書日記
津村紀久子など5名『あなた』palmbooks(図書館)
津村紀久子の本を図書館で検索してみると出て来たので予約した本。palmbooksという出版社名らしいが、どうやら個人出版社であり、この本が2冊目の出版であるようだ。体裁はハードカバーの文庫本、という感じで本巻は5編の掌篇小説アンソロジー。5作品とも「あなた」または「君」を用いる二人称作品であった。なお、全編とも書き下ろしなので初出ばかりである。
内容紹介では(実際の紹介文とは変えて、著者名・産品名を先にする)
津村記久子「六階を見習って」
あなたが私に寄越してくれたさまざまな物が、もしその時に手に入らなかったとしたらと考えると、ちょっと恐ろしいなという気がしてくる。
岡田利規「一月、生暖かい月曜日の午後のこと」
なんであれば出来事とも呼べないかもしれないくらいのもの、きわめてうっすらとした出来事のようなものからでさえ、忘れがたい印象をふいに得る、ということはきみにももちろん時々起こる。
町田康「言ひ譯」
此の度は機会を与えてくれてありがとう。本当に感謝している。(…)そんな僕がつい、本当に、と書いてしまったのはマジで貴殿に感謝しているからだ。
又吉直樹「行列」
あなたは引っ越してきたばかりの街を一人で歩いている。真っ直ぐな道の果てに寺院と思しき白い塀が見える。
大崎清夏「眼鏡のバレリーナのために」
茂呂来さん、茂呂来さん、聞こえますか。(…)きっとそちらはいま、おくつろぎタイムですよね。
さて、二人称小説と言うのは読者自身が「あなた」になれるかどうかがポイントになると思っている。自分が物語の主人公や登場人物になったような、あるいは著者にページの向こうから呼びかけられているような、奇妙な感覚が味わえるのであるが・・正直に言って、この5人の著者のうち津村紀久子以外は初対面の作家ばかりというせいもあるのであろうけれど、あまりうまくいって居ないように思えた。この方式に合っていたのは又吉直樹のが一番うまくいったようだ。また「あなた」の意外な正体は津村紀久子であろうか。
(2024年1月14日読了)
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