読書日記

『誰に見しょとて』 <旧>読書日記1543 

2024年01月19日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


菅浩江『誰に見しょとて』早川書房(図書館)

誰に見しょとて、紅(ベニ)鉄漿(カネ)つきょぞ
意味:誰に見せようとして顔に紅をひき、お歯黒を塗ったりしましょうか。
後に、みんなぬしへの心中立て(みんな恋しいあなたに真心を見せるためです)と続く。
長唄「京鹿子娘道成寺」より

化粧を主題とした連作短篇集で、大まかには「美容+医療を謳う革新的な企業コスメディック・ビッキーは、アンチエイジング、身体変工などの新商品を次々に発表し、人々の美意識、そして生の在り方までを変えていくが…。」ということになる。

「人体改造や整形によって自分らしく生きられるならいいじゃない!」的な主張をどちらかというと是として描いていて、ナチュラル志向を非合理的(あるいは強がり)として描いているこの話は読み方によってはディストピア物であり、「いや、それは違うでしょう」と異を唱える間もなくビッキー社いや著者の意志に流されてしまう。

初めは「東京湾に新設された超巨大フロート建造物〈プリン〉のメインテナント〈サロン・ド・ノーベル〉には美容に関するすべてが収められていた。理想の化粧品や美容法を求めて彷徨う“コスメ・ジプシー"たる岡村天音は、大学の先輩が生まれ変わったような肌をしていることに驚く。彼女は“美容+医療"を謳う革新的な企業コスメディック・ビッキーの〈素肌改善プログラム〉を受けたという」というスタートであるが、話が進むにつれてビッキー社が大きくなり、怪しげな感じも醸し出しつつ、遂には宇宙人との邂逅の可能性にまで至る。

SFマガジン2008年4月号から2013年9月号までに発表された10編の連作短編(私はこの時期のSFマガジンはまったく読んでいない)
「流浪の民」(2008年4月号)「閃光ビーチ」(2008年9月号)「トーラスの中の遺物」(2008年12月号)「シズル・ザ・リッパー」(2009年3月号)「星の香り」(2009年6月号)「求道(グドウ)に幸あれ」(2009年9月号)「コントローロ」(2010年4月号)「いまひとたびの春」(2010年7月号)「天の誉れ」(2013年7月号)「化粧歴程」(2013年9月号)
(2021年7月23日読了)



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