読書日記

『歓喜の歌 博物館惑星V』 読書日記1536 

2024年01月03日 ナビトモブログ記事
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菅浩江『歓喜の歌 博物館惑星V』早川書房(図書館)

この3巻からなるハリーズを『永遠の森』は2日に分けて読んだが、『不見の月』はそれを読み終えると同時に新しく借出し、1日で読了。その翌日3冊目の『歓喜の歌』を借り出して読了寸前まで読んで読み終えるのを翌日にまわした。結局5日間で読み終えたのであるが、このシリーズを知らなかったことはある意味幸せなことであった。なぜなら、出版された時から読んでいたのであれば初巻から3巻目が終わるまでに19年という年月が必要だったからだ。

さて、内容的には『不見の月(ミズ ノ ツキ)』の続編であり兵藤健の謎の叔父ジョー(兵藤丈二)の正体も判る。
「一寸の虫にも」:遺伝子を不法改造された蝶がアフロディーテで逃げだし、種の拡散を防ごうとする。
「にせもの」:本物と偽物(コピー)の差は何なのか?アフロディーテを翻弄して去った国際警察機構美術班の木下五郎が初登場、彼は大規模な美術品贋作組織「アートスタイラー」の名前を教えて消える。。
「笑顔の写真」:アフロディーテは開設50周年記念展で忙しい。その記念展の記録写真家として推薦されたジョルジュ・ペタン。笑顔の写真家として知られる彼は『太陽の光』として知られる作品の背景に写っている画廊とのトラブルを抱えていた。同時に前回の事件にはぐれAIが関与している可能性が浮かぶ。
「笑顔のゆくえ(承前)」:前章でトラブルは解決するが、写真家自身が原版を失ったその『太陽の光』を求めていた。はぐれAIを探す捜査の中でいままで隠れていたC2と言うAIが発見され『太陽の光』のでーたが発見される。
「遙かな花」:立ち入り禁止地域に入ろうとしたケネト・ルンドクヴィストはプラントハンター。その父と関係のあった製薬会社の会長ヨーラン・アベニウスはケネトを助けようとするがその真意は何か?
「歓喜の歌」:健はヨーランの手助けを得てアートスタイラーとの対決を図るが、彼の正体は木下五郎によってあっさり暴露され作戦はうまく行かない・・が、それ自体も健には隠されていた作戦の一部であり、隠れているアートスタイラーのボスの居所などが五郎に寄って暴露される。開館50周年の記念式典で「歓喜の歌(ベートーベン第九の合唱曲)」が流れる中で、一件は落着し、この五郎こそが健の叔父ジョーであると判る。

『不見の月』と『歓喜の歌』は連作であり、『永遠の森』とは少し感触が違う。私には20年近くの歳月がその差を生んだと思うが・・この20年ほどの間の科学技術の進歩を思えば、将来、この続きは読めるのであろうか。

上での要約には含ませ切れない内容の幅と広さと濃さが存在する本である。何しろ、「美とは何か」を中心とする哲学的な問いに答えようとしているのであるから・・。しかし、その点については少し物足りなくも思うのである。
(2021年7月9日読了)



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