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読書日記
『烏百花 白百合の章』 <旧>読書日記1522
2023年12月02日
テーマ:<旧>読書日記
阿部智里『烏百花 白百合の章』文藝春秋(図書館)
八咫烏シリーズで2冊目の外伝集である。これを読むとシリーズの1〜2冊目を読んだときの想いが戻ってくる様な気がする。
初めから
「かれのおとない」:第1部で無念の死を遂げた茂丸の妹と雪哉との交流を描く。
「ふゆのことら」:北家の郷長の三男である市柳がふと漏らした一言で雪哉の怒りを買い折檻を受ける。
「ちはやのだんまり」:山内衆の一人である千早の妹が帆桁男を連れてきて・・明留が世話をする。
「あきのあやぎぬ」:夫が急に死んで未亡人となった環が、西家の嫡男顕彦の18番目の妾となったいきさつ。
「おにびさく」:鬼火灯籠を作る職人の登喜司が世に知られる職人となるきっかけの作品を作る。
「なつのゆうばえ」:大紫の御前の若き日の野望と弟の融に自分と同じ資質を持つことを見いだす。
「はるのとこやみ」:楽士である伶は長琴の名手である浮雲とひそかな合奏で情を通じる。しかし、自分の音を失った伶は自殺し、その双子の兄である倫は生きがいを失う。
「きんかんをにる」:奈月彦と浜木綿の娘、紫苑の宮が父から金柑の煮物の作り方を教わる話とその裏。
の8篇で、「かれのおとない」は『楽園の烏』および『烏百花 ほたるの章』の同時購入特典としてつけられていたもの。最後の「きんかんをにる」は書き下ろし。他の6篇はすべて「オール讀物」に掲載されたもの。
実は本篇全6巻を読み終えた時、少々がっかりしたことを覚えている。第6巻の読書日記にも書いたのであるが、
著者は「新刊が出るたびに、既刊の意味が変わり、読み返すと新しい発見がある。そういうものを書いている」と言うのであるが、その意図は貫通している。
(中略)
前の4巻でせっかくうまい世界を構築していたのに「新しい発見」を求めすぎて壊してしまったような感じ。
だったのである。
今、実を言えば八咫烏は『楽園の烏』が出て第2部が始まっているのであるが、改めて読もうという気持ちは起きていない。それはシリーズ1での第5巻と第6巻、特に最終巻での後味の悪さが影響しているのであるが、本書を読んで最初期のゆったりとした世界を思い出した。
(2021年6月10日読了)
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