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読書日記
『カメラを止めて書きます』 読書日記298
2023年12月01日
テーマ:読書日記
ヤンヨンヒ『カメラを止めて書きます』クオン(図書館)
著者のヤン ヨンヒは本名 梁 英姫日本の映画監督で捜索活動にはヤン ヨンヒを使う。のであるが、著者についてまったく知らず、ただ書評を読んだだけで図書館で借りた。
内容案内では
家族を撮り続けることは 自分への問いかけ
ドキュメンタリー映画『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『スープとイデオロギー』の監督ヤン ヨンヒによる書き下ろしエッセイ
人々はヤン ヨンヒについて「自分の家族の話をいつまで煮詰めているのだ。まだ搾り取るつもりか」と後ろ指をさすかもしれません。 しかし私ならヤン ヨンヒにこう言います。「これからもさらに煮詰め、搾り取ってください」と。
ヤン ヨンヒは引き続き煮詰め搾り出し、私たちはこれからも噛み締めなければなりません。
――映画監督 パク・チャヌク
(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『お嬢さん』)
となり、amazonではそれに続けて
「父の娘であること、兄たちの妹であること、女であること、在日コリアンであること、そのすべてから解放されたかった。家族にカメラを向けているのも、逃げずに向き合い、そして解放されたかったからである。(…)いくつもの手枷足枷でがんじがらめになっている自分が自由になるためには、自分にまとわりついているモノの正体を知る必要があった。知ってこそ、それらを脱ぎ捨てられるような気がしていた」
(本書より)
家族を撮ること――それは自分のバックグラウンドと広く深く向かい合うことだった。
映画監督ヤン ヨンヒが、自らの家族にカメラを向けた<家族ドキュメンタリー映画3部作>のビハインドストーリーや、撮り続けるなかで感じる想いを、率直な語り口で綴ったエッセイ。
ヤン一家の話を通して、日本と朝鮮半島が歩んできた道、<家族>、そして<わたし>という存在を、見つめるきっかけになる一冊。
「日本と朝鮮半島の歴史と現状を全身に浴びながら生きてきた私の作品が、人々の中で語り合いが生まれる触媒になってほしい。そして私自身も触媒でありたい。生きている限り、伝え合うことを諦めたくないから」
(本書より)
という文も掲載している。
著者は現在は韓国籍であるが、もともとは大阪府大阪市生野区に生まれた在日朝鮮人2世で、幼いときから民族教育を受けて育った。 両親は在日本朝鮮人総連合会の幹部を務めていて、父親は北朝鮮から勲章をもらえるほど熱烈な活動家だった。1971年から1972年にかけて、両親が3人の兄を帰還事業で北朝鮮に送ったために家族が別れて暮らすことになっていたが、割と頻繁に北朝鮮を訪れていた。が、著者の映画製作が北朝鮮で問題になって、北朝鮮への入国禁止となり今は兄たちとは分断状態である。
それにしても驚いたのは北朝鮮への帰還事業は1950年代に始まり「地上のの楽園」と謳われていたことは知っていたが1971年・1972年という時にもまだ続いていたとは知らなかった(帰還事業は1967年に一時休止され、71年に再開されたが1984年に終了したようだ)。社会主義に対する幻想がまだ生きていた時代はともかく、高度経済成長が日本に繁栄をもたらした時代まで続いていたとは、全くの驚きである。
(2023年11月14日読了)
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