読書日記

『スギハラ・サバイバル』 <旧>読書日記1509 

2023年11月06日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


手嶋龍一『スギハラ・サバイバル』小学館文庫

この一つ前の読書日記の対象である『鳴かずのカッコウ』を読み終えてすぐに購入してあった本書を読み出した。

ユダヤ人難民に対して本国からの訓令に反してビザを発行し続け「日本のシンドラー」とも言われる外交官杉原千畝のことを知っている人も多いと思う。私は2019年に『諜報の天才 杉原千畝』を読んで彼が一流のインテリジェンス・オフィサーであることを知った。
(<旧>読書日記1508https://www.navi-tomo.com/user/blog/diary_detail898900.html

さて、この杉原の「命のビザ」によって救われた人たちをスギハラ・サバイバーあるいは本書の題名となっているスギハラ・サバイバルというそうで、本書はそうしたスギハラ・サバイバルであるアンドレイ、ソフィーの2人が一時的に滞在した神戸で雷児と呼ばれる少年と結んだ友情を軸としたインテリジェンス小説である。もっともこの3人が出会った頃はまだ10代初めの年齢であった。

本書の探偵役と言えるのはイギリス人のスティーブン・ブラッドレー、とアメリカ「商品先物取引委員会」に属するマイケルコリンズの2人。この2人もオックスフォード大学の同窓生でこちらも友情は固い。そして、探索のきっかけは本国に左門のために呼び出されたスティーブンがマイケルにイギリスで会おうと提案したことに始まる。共にインテリジェンスに携わる2人の会話の中から1人の人物が浮かび上がってくる。

それは松雷(マツライ)こと本名松山雷児。大阪ではちょっと名の売れた相場師であるが世界的には無名に近い。しかし、この男がリーマンショックなど世界的影響のある事件が起こる度に果敢な取引をして大金を稼いでいる。しかもそのたびに香港のチャリティ・ファンドに大金を拠出している。この男の背景にはなにかがあるのか。

やがて、スティーブンの探索は3人の人物に行き当たり、その関係からソフィーはユダヤ系のなんらかの組織の一員ではないかと推定する。終盤、スティーブンは松雷の生前葬につき合わされ、その場でのアンドレイと対峙しての壮絶な取引に立ち会うことになる。
(2021年5月17日読了)



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