読書日記

『鳴かずのカッコウ』 <旧>読書日記1508 

2023年11月04日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


手嶋龍一『鳴かずのカッコウ』小学館(図書館)

ネットの中にはさまざまなゲームが無料で提供されている。そんな中に「INTELLIGENCE SKILLS CHALLENGE」(*)というゲームがあって、「あなたのインテリジェンス・オフィサーとしてのAptitude(適性)のほか,記憶力や分析力等といった,インテリジェンス・オフィサーとして求められるSkillsを試すことができます。」と記されている。端的に言ってスパイの素質があるかどうかを試すゲームである。実は私はこのページを見つけたが、実際のゲームは用心の為にやっていない。

なぜなら、このゲームは公安調査庁というわが国の実在のインテリジォェンス機関のサイトにあるから。要はこの機関によるリクルート(要員採用)の入り口の一つと考えられるからでもある。ま、私の年齢でいまさらリクルートされるはずは無いだろうとは思うけれど。

さて、この小説は公安調査庁という国の実在機関を舞台にしたインテリジェンス小説である。著者は小説では無いこの役所についてのノンフィクションも書いていて、言わば、主人公である梶壮太を通じてこの役所の仕事を描いているとも言える。壮太は本巻の末尾で、イギリスの一流諜報官から緻密な調査能力、頭抜けた記憶力、野心の無さなど壮太に勝る逸材はイギリス情報部にも多くは居ないと評価されるのであるが、やる気があるかどうかを疑われ、地味な人柄でもあって、部内で超ジミーあるいはジミー・チョウとあだ名されている。

この壮太同僚の西海帆稀、アラビアのロレンスことT・E・ローレンスにあこがれてこの機関に入りその為かMissロレンスと呼ばれている。そして上司の柏倉頼之、実は百戦錬磨の諜報官である。小説はこの3人を軸としてインテリジェンスの世界を案内してくれる。

ジョギング中に船会社が高級住宅街に貸家を持っていることを知った壮太の疑問から始まったインテリジェンスはその会社が中国のスリーパー企業の役割をし、さらに米中が秘かに接触していることを突き止めるのであるが、それは明瞭な功績とは認められないで終わる。

そして、それに気づいた英国情報部(本書中ではその所在地からヴォクソールと呼ばれている)の一員は壮太に目をつけて協力を申し出、続編があるかもと匂わせて話は終わる。

なんと言うか、日本人著者がインテリジェンス(諜報)の世界・・ジェームス・ボンドが活躍するような世界ではない世界を描き、教えてくれる様になるとは日本のインテリジェンスも理解されつつあるのかもしれない。

なお、この本を読んだいきさつは書評でとりあげられていたからであり、「鳴かずのカッコウ」の意味を知りたくも思ったからであった。書評を読んで図書館に予約を入れたのが3月6日で順番が回って来たのが5月13日。2ヶ月余りの待ち時間でその間に文庫で『スギハラ・サバイバル』を買ったのであるけれど、何となくそちらには手を付けなかった。
(2021年5月14日読了)
(*)http://www.moj.go.jp/psia/ISC/index.htmlの中にある



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