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読書日記
『高層の死角』 読書日記251
2023年08月29日
テーマ:読書日記
森村誠一『高層の死角』創元推理文庫(図書館)
趣味人のコミュで触発された本で、図書館で回顧展的に並べられていたので借りた本。
著者の作品を読むのは初めてで、一言で感想を言えば「本格派ミステリー」であった。
謎は密室トリックとアリバイ崩しの2つ。特に後者の追求はしつこく密度の濃いものであった。1969年に発表された本作の当時では意表をつくトリックであったのではないかと思う。
私が推理小説を読むようになったのは小学生の頃でルパンとかホームズとかを読んで悪党であるルパンに惹かれたりしていた。高校生の頃にヴァン・ダインの推理小説20則などを知り、古典的な作品を読んでいた。それからハードボイルドというちょっと枠から外れた作品へ移り、そこからさらに冒険小説、ル・カレなどのスパイ小説へと範囲が拡大し、必ずしも20則にはこだわらなくなっていった。今は「日常の謎」系のものを好んでいる。
推理小説を読み出したころから早50年が経ち、多くの作品が書かれたことによる内容も変化多種多様となって、推理小説のあり方もずいぶん変化した様に思う。
50年以上前の1969年に発行されたこの本格派ミステリーは私自身の読み方の変化や背景を含めて考えて、改めて評価すれば、トリックに偏りすぎている様に思えた。2つの殺人に至る動機が単純すぎると言うか、弱い様に思えたし犯人が誰かという謎はほとんど無くて、警察によるしらみつぶし的な捜査手法(これ自体は力尽くではあるが、ごく普通の警察の捜査手法であり正当なやり方だと思う)によるアリバイ崩しに話の重点が置かれているために単調に感じた。最初の殺人の時の手際の良さ(心臓を一突き)があり得るかどうかはともかくとして、捕まった犯人があっさり犯行を認めるのは話をまとめるには良いけれど、実際だったらどうだろうかとも思ったし。
(2023年8月13日読了)
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