読書日記

『大福三つ巴』 <旧>読書日記1415 

2023年07月31日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記


田牧大和『大福三つ巴』講談社文庫

宝来堂うまいもん番付という副題がついた1冊で久しぶりの田牧大和作品である。宝来道は江戸の小さな版元で女主の夕、彫り師兼摺師の職人政造、夕の姪であり絵師の小春の三人だけでやっている。もっぱら名所画を摺り売っている。そこへある日、宝来堂で板木づくりと摺りを請け負っているなじみの番付屋・長助が「一大事」と飛び込んできたことから、事態は一変。長助が作った「大福番付」に載った店をめぐる騒動が起こる。

長助は当初「大福番付」の東の大関に「和泉」、西の大関に「魚河岸屋台清五郎」とおき、西の関脇に「竹本屋」を置いたのであるが、どうやら竹本屋の筋から文句を付けられたらしい。で、魚河岸の屋台である清五郎を番付から外し、竹本屋を西の大関にしたのであるが、今度は和泉の番頭から脅しを受ける・・長助はお夕の知り合いである俳諧の宗匠である藤堂夜雪のところに匿ってもらうが、今度は宝来屋にそのとばっちりが来る。元々は主が独学で開業した和泉と京都の老舗の江戸店である竹本屋の意地の張り合いと、犬猿の仲が生ませた騒動である。

そんな訳で宝来堂は、自分たちで番付を作り直して出すことにする。「手に取ったお客さんも、番付に載った店も、お祭りのように盛り上がって楽しめる」番付を作るには、いったいどうしたらよいのか。皆で知恵を絞り、工夫を重ねてたどりついたのは、「大福合せ」を開くこと。つまり、一般の町人にも食べ比べてもらい、投票によって番付を作ろうという試みである。果たしてこの試みはうまくいくのか・・

シリーズものに出来る土台はある。だが、シリーズの2作目は難しいとも思う。思えば、作者の「濱次お役者双六」は途絶えて久しく、その後に出たいくつかのシリーズものも続いているのは「鯖猫長屋」シリーズだけとも言ってよい。著者にはもう少し頑張って欲しいと思っている。
(2021年1月17日読了)



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