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読書日記
『江戸は浅草5 春の捕物』 読書日記225
2023年07月08日
テーマ:読書日記
知野みさき『江戸は浅草5 春の捕物』講談社文庫
著者はわたしの個人的分類になるが「新刊待ち」の状態に入った。つまり、著者の出している本をほぼ読み尽くし、新しい作品を読むためには新刊が刊行されるのを待つしか無い、という状況である。現在、この状況にあるのは青山文平、そして読んでいるシリーズものという条件付きで佐伯泰英、上田秀人などである。
内容紹介は短い。
矢師の真一郎は多香との関係に悩んでいた。決死の覚悟の妻問いは宙ぶらりん。浅草は六軒長屋に流れて二年経ち、ヒモで笛師の大介、胡弓弾きの鈴らとも関係が深まったが、先行きの見えぬ日々。そんななか、菓子屋の娘からなぜか矢の注文があり——。気ままに暮らす江戸っ子たちの粋と人情、共感必至の書下ろし。
そんな中で本書はおよそ1年5か月ぶりの新刊。読み始めは少し戸惑うも「神田職人縁」シリーズと「上絵師」シリーズの二つは内容が似ていて、間隔が開くと内容を思い出すのに少し手間取るが、こちらのシリースは毛色が少し変わっているのですぐ慣れる。とは言え、1編が90ページぐらいの中にあれこれの話が入り交じっているので要約はしにくい。
今回は「横恋慕」「白澤と八尾比丘尼」「翁の行方」「春の捕物」の4編。
「横恋慕」は内容紹介の菓子屋の娘からの矢の注文から始まり、題名の横恋慕に繋がる話だが、90ページほどの間に多くの人物が絡み合い、一体誰が誰に対して横恋慕をしているのか?という話。この騒動は関係者一同が集まって話し合うことで解決に向かう。
「白澤と八百比丘尼」だが、はじめに注釈を書く。「白澤」はハクタクと読み、顔に3つ、腹に3つの6つの目を持ち、邪気や悪病を払うという瑞獣である。一方の「八百比丘尼」は人魚の肉を食べて不老長寿になった女性で夫や知人と何度も死に別れたのちに出家して比丘尼となった。話は真一郎と多香がある夜、不思議な白い犬の様な物を見、翌日久兵衛からそれは白澤という瑞獣だと教わった上で白澤を探せと命令される。一方で大介の師匠である音正を殺したとされるのは雪という女(死んだはず)であるが、真一郎たちが白澤探しをしている間にその雪を見たとする知らせが入る。その雪は八百比丘尼たらんとした女でもあり、この二つの妖怪の正体は何かという話である。
「翁の行方」は真一郎と大輔は能面の「翁」にそっくりな老爺と知り合うが、その顔を見て子供が卒倒する騒ぎになる。実は老爺は関西の名を知られた能楽師でお忍びで江戸に来ている。その目的は鷹矢(多香の能面師としての名)という能面師と会って能面を頼みたいというもの。それとは別に卒倒した子供と関わった2人は老人の安楽死をさせている翁がいるらしいと判り、その正体を暴く。
「春の捕物」は鈴の縁談から始まる。妻問いをしたのは最上屋という畳屋の壱助という男。鈴はそれを聞いて瞬時に断ってください、ということで壱助に望みはない。その鈴が仕事中に男に顔をのぞき込まれ驚いて気を失う。さて、その男は何者か?ということで話が進む。その男は幸之助と言う名を使っていると知れたが、実はそれは鈴の師匠であるお津江を殺した男では無いかという疑いが出てくる。すったもんだの末に幸之助は捕まり死罪となるが、その騒動の内に長屋の皆はこの長屋を出て居く気は無いと互いの気持ちを知ってまとまりが深くなる。
著者の知野みさきは複雑な話を短い作の中にうまく詰め込むので、要約をするのが難しい。最近流行りのチャットGPTに要約を任せたいと思う位だ。
(2023年6月22日読了)
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