読書日記

『勘定侍柳生真剣勝負 七 旅路』 読書日記218 

2023年06月24日 ナビトモブログ記事
テーマ:読書日記

上田秀人『勘定侍柳生真剣勝負 七 旅路』小学館文庫

著者の上田秀人は江戸時代を商業の発展を背景としての武家と商家の勢力争いとみておりいくつものシリーズがこの主題の変奏曲を奏でているが、このシリーズは江戸時代の初期、勢力争いが始まった頃の話である。と言うか、武力と権威を持つ武士に対して金(経済)を持つ商家との争いは結局商家が有利に推移するというのが著者の見立てでありその端緒を述べるかのごときシリーズである。

主人公の淡海一也は柳生宗矩の庶子であり、柳生家が立藩するにあたって、勘定方として家政を見させようとして商家(唐物問屋)に育った一也を召喚するが、武士になることなどまっぴらご免の一也はともかく家政の立て直しだけして大坂に帰り、唐物問屋を継ぎたいと考えている。そこに将軍である徳川家光などいろいろな人物が絡み、無事に一也の意図はなるか?というのがシリーズの流れである。

さて、裏表紙に書かれた、本書の内容は以下の様なもの。

柳生宗矩の意に背いて、淡海一夜は柳生十兵衛と大和へ向かっていた。
東海道を上り、ようやくたどり着いた箱根だったが、早くも関所番頭から足止めの嫌がらせに遭う。
一方、信州高遠藩の保科肥後守正之を執政にすべく、大石高の国への領地替えを企む徳川将軍三代家光の野望を果たさんと、宗矩は加藤明成が統べる会津藩に潜り込ませた伊賀者に密命を発した。
他方、一夜の嫁を望む信濃屋の永和と伊賀忍の佐夜はついに江戸に足を踏み入れ、駿河屋総衛門に厄介に。
だが、宗矩に知られ、忍を差し向けられてしまう。
さらに、老中堀田正盛の陰謀に巻き込まれた柳生左門は……。

と、これだけ読めば何がなんだか判らない粗筋である。この話は幕府上層部、つまり将軍家光や老中などの思惑や意図のレベル、上との関係を維持しようとする柳生家内部の相剋のレベル、そして一也とその周辺人物の関わり、あるいは商家同志の争いのレベルと3層の構造を持っている。上の粗筋はそれが入り交じっているから判りにくい。

と言うか、読者は著者の示す道筋の通り、それぞれの寸劇をすらすらと面白がって読んでいれば良いのである。
(2023年6月8日読了)



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR







掲載されている画像

上部へ