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読書日記
『図書館の子』 読書日記212
2023年06月12日
テーマ:読書日記
佐々木譲『図書館の子』光文社文庫
書店に入るとまず新刊本のコーナーに行く。それは既読の本または購入済の本を二重に買わないためのテクニックの1つだ。新刊として出ているものが既読である可能性は少ないからだ。
ということで新刊本のコーナーで出会った本がこの本である。
帯に「時の旅人(タイムトラベラー)たちを巡る6つの物語」とある。
裏表紙には
猛吹雪の夜、図書館に少年がひとり取り残された。暖房機が壊れ、極寒の館内。突然現れた謎の男は少年を救い、やがて大切なことを伝え始めた―。(表題作)一九三一年の満洲。大連のダンスホールで働く千春は、内地からの旅行者らしき青年に恋をする。彼には、胸に秘めた危険な計画があるようなのだが...。(「傷心列車)
時の旅人(タイムトラベラー)たちの数奇な運命を描く全六篇。
どうやらSFらしい、ということで手に取った。SFは私が小学生の時に「空想科学小説」として読み始め中学1年生の時からSFマガジンを読み始めた私にとっては最も長く続いている趣味である。が、和製のもの(著者が日本人の作品)は20歳になった頃にはほぼ手を出さなくなっていた。それが数年前に菅浩江を読み、今回のこの作品で少しは見直してみようかなと思う様になった。ただ、著者は警察物を主に書いているようでSF的なものは珍しいらしい。とすると、SFに関しては著者に多くは望めないかもしれない。
と言うか、六篇の共通点はタイムトラベラーらしい人物が登場することだけで、扱われている時代は「遭難者」が東京大空襲の少し前と現代。「地下廃駅」は戦災を免れた谷中の戦後間もないころと現代。「図書館の子」は時代も場所も不明だが、子供を救おうとする男の話。「錬金術師の卵」は500年前のフィレンツェと現代。「追秦ホテル」と「傷心列車」は満州を舞台にする。現代が絡むことで、時間が重層的になる感じだ。タイムトラベルの原理も仕組みも出て来ないし、タイムマシンらしいガジェットも出て来ない。
「地下廃駅」だけは廃視された防空壕と戦時中に謎の列車があったという地下鉄駅への地下通路がタイムトンネルとして出てくるが、あとはいきなりタイムトラベラーとなったり、登場したりする不可思議さを説明する言葉は無いが、それが話の深みを増している。
著者は1950(昭和25)年、北海道生まれ。広告代理店、自動車メーカー勤務を経て、79年に『鉄騎兵、跳んだ』でオール讀物新人賞受賞。90年、『エトロフ 発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年、『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。また、2010年には『廃 墟に乞う』で直木三十五賞を受賞し、重厚な作風で知られているらしい。
(2023年5月27日読了)
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