読書日記

『金の美醜』 <旧>読書日記1391 

2023年06月09日 ナビトモブログ記事
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上田秀人『金の美醜』ハルキ文庫

日雇浪人生活録も巻数を重ねて10冊目である。今回は諫山左馬介が分銅屋仁左衛門に命じられて博打場に行く場面から始まる。前巻の終わりに出て来たびた銭がどうやら絡んでいて、闇の仕事を頼めるような無頼探しである。が、しかし、これについての話は巻半ばから巻末近くに会津藩がびた銭を鋳造したという話で出てくるだけで本巻の流れから考えれば伏線の1つであろう。

ということで本巻では水戸藩と会津藩という2つの藩が分銅屋から金を借りようとするのが主な話である。より、中心となるのは会津藩であり、会津藩は幕府からのお預かりとして実利を得て居るお蔵入り領5万石を、本地として直すことを求めている。ただ、これは分銅屋などの商人には理解しがたいことでもあった。本地に直せば表高が増え、それに繋がって藩としての経費が増すからである。

そこで、会津藩内部の話として語られるのが、お蔵入り領から銅が採れることが判った。と言うか、既に鉱山として秘かに開発し、産出した銅の秘かな使い道としてびた銭を鋳造したのである。もっとも、量としては数千枚、金額にして20両程度のものであるが・・

この直轄地としたいという願いに対して、老中の答えは会津藩は慣例として免除されてきたお手伝い普請をせよというものであり、本地になおすことは許さぬとするものであった(老中のこの先例破りの意図は不明)。かくて、会津藩は手伝い普請を逃れるために運動資金が必要になり、分銅屋を頼って借金することになる。

とまあ、この巻全体が伏線のようなストーリーであり、この後どうなるなって行くか、への期待に満ちるものであり、そして著者の筆の運びを楽しむことになるのであるが、中身はどれだけあるのかの問題でもあり、2時間足らずで読み終えてしまった。
(2020年11月13日読了)



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