読書日記

『変わったタイプ』 <旧>読書日記1383 

2023年05月24日 ナビトモブログ記事
テーマ:<旧>読書日記

トム・ハンクス『変わったタイプ』新潮社(図書館)

たまたま知ったのだが、新潮クレスト・ブックスという新潮社のシリーズがあって、「海外の小説、自伝、エッセイなどジャンルを問わず、もっとも優れた豊かな作品を紹介するシリーズです。」と、宣伝している。
1998年から出されていて、今は全部で105冊が出されている。内容だけでは無く、ソフトカバーではあるが装丁にも紙質にもこだわりがあるシリーズである。

本書もその1冊で
月旅行を目指す高校時代からの四人組。西部戦線からの帰還兵のクリスマス。変わり者の億万長者とその忠実な秘書。男と別れたばかりの女がつい買ったタイプライター。離婚した父母のあいだをゆききする少年。内戦で祖国を追われ、ニューヨークに上陸した移民。ボウリングでパーフェクトスコアを出し続け、セレブに上り詰めた男―。世界が驚いた、小説家トム・ハンクスのデビュー作。良きアメリカの優しさとユーモアにあふれ、人生のひとコマをオムニバス映画のシーンのように紡いだ、17の物語。

各短編の題名を記せば
「へとへとの三週間」(4)、「クリスマス・イヴ、一九五三年」、「光の街のジャンケット」、「ハンク・フィセィのわが町トゥデイ−−印刷室の言えない噂」(*)、「ようこそ、マーズへ」、「グリーン通りの一ヶ月」、「アラン・ビーン、ほか四名」(4)、「ハンク・フィセィのわが町トゥデイ−−ビッグアップル放浪記」(*)、「配役は誰だ」、「特別な週末」、「心の中で思うこと」、「ハンク・フィセィのわが町トゥデイ−−過去に戻って、また戻る」(*)、「過去は大事なもの」、「どうぞお泊まりを」(**)、「コスタスに会え」、「ハンク・フィセィのわが町トゥデイ−−エヴァンジェリスタ、エスペランザ」(*)、「スティーブ・ウォンはパーフェクト」(4)

これらのうち(*)の4篇は新聞のコラム風に1行15文字ずつ3段に別れた印刷。(**)は戯曲の台本風の作品。(4)はアンナ、Mダッシュ、スティーブ・ウォンそれに僕という4人の絡む物語だ。そして、全部では無いけれどほとんどの作品にタイプライターが出てくる。さまざまなメーカーの名前の違うタイプライターであるが。そして登場人物にもさまざまな型(タイプ)があって、題名のタイプの意味を二重にしている。いや、内容もバラエティに富み、SF的なものもあって読後感は良く、面白いものであった。マーク・トゥェインやO・ヘンリーのようなアメリカ短編小説の系列の中にあるというヘラルド・スコットランド誌の評価も的外れでは無く、つい先日読んだルシア・ベルリンをも思い出した。

なお、最後に蛇足になるが、著者は「フォレスト・ガンプ」でアカデミー賞主演男優賞を獲得し、その他「アポロ13」、「プライベート・ライアン」、「ターミナル」「ハドソン川の奇跡」などに出演した映画俳優である。2018年の本書の出版により肩書きに「作家」が加わった。俳優が書いた本という意味で色目で見られがちかとも思うが、充分以上に良質な作品であった。
(2020年10月28日読了)
19日に借りて23日から読み出した。
以下は読書メーターにあった各篇の要約
「配役は誰だ」:才能はある、あと必要なのは自分を売り出す方法。
「グリーン通りの一ヶ月」:相手への偏見と嫌悪もありつつ、隣家の天体望遠鏡で見た木星への感動が止められない主人公。
「心の中で思うこと」:タイプライターは置き物ではなく、毎日使うことに意味がある。
「特別な週末」:実母と会う日のウキウキな一日。作者に男の子の気持ちが残ってるんだなぁ。
「コスタスに会え」:内戦で祖国を追われ、ニューヨークに上陸した移民
「光の街のジャンケット」:ジャンケット(宣伝旅行)分刻みのスケジュールに疲弊する脇役俳優



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