読書日記

『立花三将伝』 <旧>読書日記1376 

2023年05月10日 ナビトモブログ記事
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読書日記1376
赤神諒『立花三将伝』講談社(図書館)

本書は戦国時代末期に入ろうとする北九州を舞台にした小説である。1560年に織田信長が今川義元を桶狭間の戦いで破った頃、北九州は守護大名から変身した大友氏がその大部分を抑えていたが、龍造寺氏が勃興しつつあり、また中国地方の勇、毛利氏も北九州に勢力を伸ばそうとしていた。

そんな時代に立花氏は大友氏の庶流であったが臣下として大友氏に仕え、筑前国立花城(現在の福岡県福岡市郊外)を拠点としており、周辺には宗像氏、高橋氏、原田氏、秋月氏などが居て、さらに南方には龍造寺氏が勢力を張っていた。というのが大雑把な歴史的背景であるけれども、本書中ではこうした大きな背景はほとんど説明されない。

そしてこの小説では、立花氏は6代目鑑光(アキミツ)、7代目監載(アキトシ)そして立花の名跡を継いだ 戸次鑑連(ベツキアキツラ)(のちに立花道雪となる)の三代にわたる。立花氏の3人の将とそれに絡む2人の美女の運命を辿る。ちなみに築後国柳川藩の祖となる立花宗茂は道雪の養子である。

話は1560年、立花家に大友宗家から与力として米多比(ネタビ)直知とその子の三左衛門が配せられ、三左衛門立花二俊と呼ばれた藤木和泉と薦野(コモノ)弥十郎とを慕い、二人を結びつける役回りを果たす。立花鑑光は監載の成長を待って家督を譲るつもりであったが、家中は鑑光派と監載派との2つに分かれていて、そうした中、鑑光は大友氏の命によって忙殺される。また主君である立花家の娘皐月と藤木家の娘佳月(和泉と皐月、佳月は従兄弟同士である)とも親しくなっていくが、皐月を弥十郎が慕い、佳月は三左衛門に慕われるがいずれの思いも叶うこと無く、この5人の結びつきは固くなっていく。

そんな中で8年が過ぎ、今度は家中があくまで大友氏に忠誠を誓おうとする大友派と新たに手を伸ばしてきた毛利氏に与することで鑑光の仇を討って独立勢力となろうとする監載を中心とする毛利派に分かれることになる。この中で、和泉は立花氏の命もあって皐月を娶ったこともあって毛利派に、弥十郎と三左衛門は大友派と分かれ戦うことになる。

藤木和泉は大友氏の討手である戸次鑑連に対して立花城に籠城して戦うが、武運拙く降伏し、命を助けようとする戸次鑑連に対しても意地と筋を通そうとし、弥十郎や三左衛門の説得もむなしく切腹して果てる。
そして、和泉の遺児は弥十郎に引き取られ薦野吉右衛門として育つ。

実は、この小説は関ヶ原の前夜、立花氏は西軍につくことに決して戦うが、その中で弥十郎の頼みを受けた三左衛門は吉右衛門に実の父親のことを話すという形をとっている。大友氏は豊臣秀吉に臣従し、立花氏もその時に秀吉によって柳川に領地を与えられ大友氏から独立するのであるけれど、結局関ヶ原の戦いの結果、滅びることになる。

戦国時代の中で主流ではない地方大名の史実は知られてはおらず、また軍事的にも家のあり方にしても織田家や豊臣家、徳川家などとも差があった(要するに古い体質が残っていた)ことを思わせる小説であった。
(2020年10月3日読了)



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