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読書日記
『図書館の魔女 1』〜『図書館の魔女 4』 <旧>読書日記1359
2023年04月04日
テーマ:<旧>読書日記
読書日記1359
高田大介『図書館の魔女 1』〜『図書館の魔女 4』講談社文庫
書店で1〜4の本シリーズが並んでいて面白そうだと買ってみた。ちなみに、第1部は362ページ、第2部は446ページ、第3部は379ページ、第4部は本文が633ページ、解説が8ページでそれぞれが1〜4を構成していて、全部で1820ページという大部のファンタジーシリーズであった。なお、単行本として出版された時は上下2冊組であり、文庫版ではそれぞれを2分して4冊にしている。
そして、そのボリュームからこの読書日記をどう書くかと言うことに迷った作品である。粗筋はたった一行でも書けるほど単純である。ただ、そのディテールが細かい。そして、数々の伏線と最後の辺りでの伏線の回収を考えると4分冊それぞれで日記を書くのでは、伏線を踏まずに細かい部分に踏み込まなくてはならない。結論として4冊を一体として日記を書くことにする。
あ、魔女という題名だが、魔法は出て来ない。あるのは言葉と推理。戦争が題材となってはいるが、部分的に戦闘シーンはあるけれど戦争の描写は無い。
全体として時代は不明、世界も著者による「海峡地域概略図」によると、図書館は東大陸にある「一ノ谷」の中にあり、西大陸には大国であるニザマ(象形文字を使うなど、どことなく中国風である)。そしてこの両国の周辺国など。
この物語世界では戦乱が目前に迫っていて、それを図書館の魔女が知謀によって防ぐ、という物語。また、ボーイミーツガールの話でもある。いや、主人公が女性だからガールミーツボーイの話である。
主人公は題名の通り図書館の魔女と称せられる少女と言っても良さそうな若い女性であるマツリカ、そして彼女に仕えるキリヒトという少年。魔女と言われながらマツリカが実は口がきけず手話で会話するという設定が実にうまい。彼女の左手(左利きである)は実に雄弁に語るのであるが、手話の判らない者には、いや手話が判っても教養が無いものには理解できない。図書館の司書としてマツリカを支えるのがハルカゼとキリンという二人の女性。ともに一ノ谷内の勢力が図書館に送り込んだスパイでもある。
キリヒトはマツリカの声となるべく推薦され、仕えることになるのであるが文字の読み書きが出来ない。そんな彼がなぜ推薦されたのであるかは第2部で明かされるのであるけれど・・キリヒトの勘の良さと目や耳の良さを次第に判っていくマツリカは手話をより発展させた指話を考案し、キリヒトにそれを教え込みながらまた自らの声を持つ心地よさを味わう。
著者の作り上げた世界は緻密であり、かつまた著者は雄弁であり、言語学を中心として植物学、地理学、地学、物理学、心理学などの知識が散りばめられ、時に難解な言葉の渦が生じる。この言葉の渦や冗長とも言える著者の語り口を乗り越えられるかどうかで好き嫌いが分かれるのではないかと思う。
第1部 山賤の里、一ノ谷 図書館の魔女と手の中の言葉
(2020年8月14日読了)
第2部 一ノ谷 地下の羈旅と暗殺者の所在
(2020年8月15日読了)
第3部 一ノ谷、ニザマ 文献学講義と糸繰る者たち
(2020年8月16日読了)
第4部 ニザマ、アルデシュ 円卓会議と双子座の館の対決
回収し忘れた伏線かもと思う叙述が2つある。いずれも冒頭近くで、キリヒトが初めて図書館に着き、マツリカに初めて会う場面で高い塔を右回りに上っていくが、下りもやはり右回りであることに気づく。もう一つ、悪役のミツクビの頭が3つある様に見えるシーンも同じ。話の勢いで忘れてしまいそうになるが、これは蛇足に近いシーンで、以後はまったく触れられないし何の伏線にもなっていない。
(2020年8月18日読了)
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