どうでも雑記

氷雨 

2022年04月06日 ナビトモブログ記事
テーマ:青春の回想

富士山遭難事故 8,氷雨

そのときは登頂したあと、下山途中の七合目付近からだった。立っていることも厳しい台風並みの春一番が吹き荒れた。富士山では風を遮るところがなく、凍り付くような冷たいミゾレ、氷雨と強風が吹き付けた。テントは飛ばされる危険から、冬季無人の山小屋の避難場所に入る。

登山者の多くは予想外の天候の急な変化と、その速さに慌ててしまった。助かったパーティは、怖くて動けなかったことも含め、強行下山せず山小屋やテントで待機したことで難を逃れた。

天候が一時的におさまったのは疑似好天だった。そんな中を下山していた多くの登山者は、氷雨によって濡れた身体が強風にさらされ、更に冷やされ、体感温度はマイナス20度だった。
地表は腰までつかるシャーベットのような雪に覆われて、一歩進むごとに体力がなくなり、低体温症で意識を失う。

一方、我々のように、避難してビバークしたが、雪崩に巻き込まれた人も多かった。
慣れ親しんだ富士山だが、それが事故回避への判断に甘さが出たことは結果として否定できない。

死亡者24名(我々のメンバー4名)をだした富士山遭難事故は日本の登山史上としては最悪の大惨事となってしまった。

亡くなった岳友の志を受けて登山活動を進めるとともに、富士山の慰霊登山を続けている。
我々の地域からも富士山を望める。その奇麗な富士山を見る度に、あの日がこんな好天だったら楽しい登山だったろう。曇りの富士山を見れば、あの時を思い出す。どちらにしても忘れられない想い出である。

何十回と登った富士山だが、kenにとっては美しく見えるほど辛くなる。近寄りがたいが行ってみたい、そこには岳友がいるからだ。
( 完 )

*訪問に心からお礼を申し上げます、ありがとうございます。



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かおるさんへ

素浪人kenさん

山は計り知れないことが起きる。気象の変化、登山者自身の体調変化、チョッとしたことでバランスを崩して落ちる。うっかり道を迷って戻れなくなる、など街中で起きることが高山では大事につながることがあります。
100%安全を前提にしたら登山はしない、登山は出来ないことになります。大事に至らない経験を積むことだと思います。

2022/08/02 18:55:34

山は恐いですね!

かをるさん

貴重なお話ですね。
小説なのかな?なんて読んでいましたが
実体験なので驚きました。
いつもは優しく見守ってくれてる山ですが
何時豹変するか
本当に怖いものです。

2022/05/16 08:18:59

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