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吾喰楽家の食卓

夢太朗師匠と二人で 

2019年12月10日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

昨日、国立演芸場の12月上席を見た。
トリを務める夢太朗は、好感の持てる噺家だが、大ファンという程ではなかった。
他には、可楽、小南、可龍も一応は知っているが、余り馴染みがない出演者だった。
だから、上席に多くは期待していなかった。
仲入りを務めた可楽は、25分の持ち時間を10分以上も残して高座を下り、盛り上がりに欠ける前半だった。

クイツキの可龍とヒザ前の小南は、マクラで可楽をいじった。
二人とも持ち時間より長く口演したようで、トリの夢太朗が高座に上がった時は、予定よりも5分早いだけになっていた。
高座に上げたのは『中村仲蔵』で、忠臣蔵五段目をテーマにした芝居噺である。
名題に昇格したばかりの仲蔵に割り当てられた役は、端役の斧定九郎だけで腐っていたが、女房の励ましで、独自の役作りをして大好評を得る噺だ。
丁寧に噺を進める夢太朗の口演は、早すぎた進行を調整しているのかと思った。

幕が下りたのは定刻より10分伸びたので、45分の長講だった。
客の入は、さほどではなかったが、その時の熱気たるや凄いもので、私が知る限り、数年前の歌丸以来だった。
特に私の左右に居る客は、身を乗り出して拍手をしていた。
帰り支度をして、興奮冷めやらぬ思いで通路へ出ると、高座を下りたばかりの夢太朗が居て、我々を見送ってくれていた。
狭い場所を客が行列して歩いているので、「良かったですよ」とだけ声を掛けたら、「有り難う御座います」と、応じてくれた。

直ぐに帰る気持になれず、伝統芸能情報館に寄って、15分ほど展示物を鑑賞して頭を冷やした。
余りのんびりも出来ないので、外に出て歩き始めると、国立演芸場の楽屋口から人が出てくるのが見えた。
そのまま永田町駅へ向かって歩くと、演芸場の脇で、その人と合流した。
洋服に着替えた、夢太朗師匠だった。
少し迷ったが、「お疲れ様でした」と、声を掛けた。

「幕が下りた時の客の熱気は、私が知る限り、歌丸師匠以来です」には、「有り難う御座います。そう言って頂くと嬉しいです」と、返って来た。
行き先を訊くと、「永田町から有楽町経由で大森まで帰る」と言うので、駅までご一緒させて頂いた。
長講は帳尻合わせかの問いには、「国立でトリを務めるときは、いつも長くなる」、「歌舞伎を知らない人でも分かるように、説明を加える」などの答えだった。
師匠からは、話題の都度、国立演芸場に来る頻度、年齢、住まい、出身地、別れ際には名前まで訊かれた。
永田町駅のホームで別れた後、断られるかも知れないが、酒を誘えば良かったと少し後悔した。

   *****

写真
12月9日(月)の昼餉と演題



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シシーマニアさんへ

吾喰楽さん

本来、私は人見知りするタイプなんです。
ところが、歳を重ねることで、少しですが、図々しくなりました。

林家正蔵さんとも会ったことはありますが、彼は急いでいたようで、挨拶をしただけで別れました。

でも、私は出待ち、をしたことはありません。

2019/12/11 23:25:25

ぼてふりさんへ

吾喰楽さん

「ネタに困ったら、オレを使え」と、歌丸さんは、円楽さんへ言ったそうです。
面白かったですよね。

古典を勉強したからこそ、新作が出来るそうですよ。

2019/12/11 23:11:27

素晴らしい、経験ですね

シシーマニアさん

又々,古典芸能界にお友達が増えましたね。

その物怖じしないゴクさんの性格の、なせる技ですよね。

私は、お声をかける処までは何度か経験がありますけど、ご挨拶止まりで終わってしまいます。

2019/12/11 08:15:51

生の良さ

ぼてふりさん

最近、又、落語がマイブームになっています。
「笑点」の大喜利などYouTubeで古い影像を見ています。歌丸と現・円楽の掛け合いは面白い!
「やるかジジイ〜!」
個人的な感想ですが、新作の上手な人は古典もいいですね。

2019/12/10 17:30:31

パトラッシュさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

偶々、この日、最高裁判所の構内にある郵便局で、生活費を下ろしたので財布は温かでした。
仰せの通り、だめもとですよね。

色々な話をしました。
中席でトリを務める志ん輔師匠の事や、風流寄席をご存じで、鳳楽師匠や先代圓楽師匠の話題も出ましたよ。
本当に中身の濃い15分間でした。

2019/12/10 10:29:32

千載一遇の好機

パトラッシュさん

貴兄の薀蓄をもってすれば、夢太朗師と丁々発止、互角に渡り合えたことでしょう。
惜しいことをしました。
だめもとで、誘えばよかったですね。
もちろん、勘定はこっち持ちで……

2019/12/10 09:27:21

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