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吾喰楽家の食卓

林家つる子の『紺屋高尾』 

2024年05月23日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

寄席は、出演者の持ち時間を身分により決めている。
国立演芸場だと、通常は前座15分、二ツ目15分、真打20分、主任(トリ)30分である。
一昨日、初日を迎えた国立演芸場寄席は、真打昇進披露公演だったので少し違った。
持ち時間は、主任の新真打だけ30分で、その他の出演者は身分を問わず15分だった。

口上があるからだが、理由はそれだけではない。
先輩真打は、短い持ち時間で軽い噺をして、新真打の引き立てに徹する。
それだけでなく、マクラで新真打に触れ、お祝いの雰囲気作りに努める。
口上では、平伏して顔だけ正面を向いた林家つる子と、最前列ど真ん中に居た私と目が合い続け、年甲斐もなく顔が赤くなった。

此の日の主役つる子は、リラックスした様子でマクラを始めた。
マクラの世間話で「3月15日」と出たので、演題は「幾代餅」か「紺屋高尾」だと思った。
両者は、主人公の職業が異なるだけで、殆ど同じ内容の噺である。
近年は「幾代餅」の方を口演する噺家が多いと感じているが、つる子は「紺屋高尾」を選んだ。

染物職人の久蔵が花魁の高尾に惚れ、3年かけて貯めた大金で高尾に会うが、高尾は彼の真心に惹かれる。
高尾は、年季明けの翌年3月15日に久蔵を訪ね、二人は夫婦(めおと)になる噺である。
落語好きなら誰でも知っている古典落語の大ネタを、つる子は独自の構成で熱演した。
久蔵と高尾の心情表現に注力しただけでなく、より噺にリアリティを持たせたのだ。

久蔵が花魁に惚れたのは錦絵がきっかけではなく、花魁道中で二人の目が合ったことにした。
会った翌朝、久蔵が身分を偽ったことを告白すると、つる子は花魁言葉も偽りだと考え、高尾に自分の言葉で心情を語らせた。
短いマクラなのに、持ち時間を15分も超える45分の長講は見応えがあった。
黒紋付に汗を飛び散らかせて演じきった満足感からか、噺を終えた彼女の顔は何とも言えない美しさだった。

   *****

写真
2024年5月21日(火)撮影 紀尾井ホールにて

お礼
「真打昇進披露公演の日の昼餉」に、拍手を有り難う御座います。この場を借りてお礼申し上げます。



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