気紛れに 言の葉揺らす 風になる

3500年前のパン屋で 

2019年07月01日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

大学生の時、杉並の下宿近くのパン屋で、サンドイッチを作る時に切り落とした耳をまとめて袋に入れて安く売っていたので、それを見つけると必ず買った。時折、卵や野菜やハムの切れ端が混じっていて美味しかった。 パン屋に入って様々なパンやサンドイッチが並んでいるのを見るのはとても楽しい。もちろん、何かを買おうとして店に入るのだが、他に美味しそうなものを見つけると簡単に目移りした。それはそれで楽しいことで、大きなパン屋で目移りして決めかねているのは決して私一人だけではなかった。そういう光景が3500年前のエジプトのパン屋でも見られたかもしれない。エジプトの西方にあるハルガ・オアシスは、紀元前1650年から1550年頃に最盛期を迎えたオアシスで、エジプトとアメリカの考古学チームが、そこで大規模なパンの町の跡を発見した。その規模から軍隊のためにパンを焼いていたのではないかと推測されている。その町ではきっと朝からパンを焼く香ばしい匂いが通りに漂っていたことだろう。そんな町のパン屋での出来事を想像してみる。***空が真っ青に晴れ渡った早朝、ハサンはパンを焼く香ばしい匂いの混じった空気を吸いながら、ゆっくりと町を歩いていると、馴染みのパン屋の前に来たことに気づき、パンを買う積りはなかったが、フラフラと入ってみると、店の奥に、最近よく見かけるちょっと年上らしい娘が焼き上がったパンを見比べていて、ハサンは陳列されたパンとその娘を交互に見ながら、話しかけようかどうしようかと迷っていたが、しばらく悩んだ末に、思い切って話しかけてみようと口を開いた瞬間、店のおじさんに、「ハサン、何にする?」と訊かれ、その娘から一旦目を離して、前に並んだパンを見ながら、思わず、「あの娘!」と指を差しながら応えると、おじさんがその娘に向かって、「ライラ、ハサンがあんたと話をしたいって」と叫び、ハサンは少し慌てたが、それを聞いたライラが振り向き、笑顔のまま近づいて来て、「あなたがハサンね。名前は聞いているわ。私はライラよ、おはよう」と言うので、ライラが自分の名前を誰かから聞い知っていたことをちょっと嬉しく思い、反射的に「おはよう」と挨拶を返したが、何か気の利いたことを言わねばならないと思いつつも、頭の中は真っ白で何も浮かんで来ず、徐々に気まずさが膨らんできたが、それでも大きな目をしたライラから目を離さないハサンを見て、店のおじさんが、「ハサン、この焼きたてのパンを半分に切ってやるから、ライラと一緒に食べたらどうだ?」と言うので、「おじさん、いくら?」と訊くと、「今日は特別だからいいよ」と言って、2つに切ったパンを紙に包んで渡してくれたので、ライラに向かって、「じゃ、一緒に食べますか?」と言葉が自然に出てきて、「いいわね。川の畔で一緒に食べましょう」という返事を聞き、「じゃあ」とハサンがライラを促してパン屋から出ようとした時、「おじさん、ありがとう」とライラが振り返っておじさんに礼を言うと、「何、今日は何かいいことがありそうだからな」と笑いながら言うので、ハサンはとてもハッピーな気分になり、ライラと家族のことなどを話しながら川まで歩き、適当な場所を見つけて並んで座り、二人でそれぞれのパンを齧りながら色々な話をし、食べ終えてもしばらく話を続けていると、ライラが「そろそろ家に戻らないといけないから」と別れを告げるので、ハサンが「また会える?」と訊くと、ライラが「もちろんよ」と応えた時の笑顔はとても印象的で、その夜、ハサンはパン屋でのライラとの出会いを詳しく日記に書き、眠ると夢の中で再びライラに会えことができ、ハサンの夢現の幸せが続いた。参考文献[1] Rosella Lorenzi. Ancient Bakery Found in Egyptian Desert. Discovery News, August 25, 2010.[2] John Noble Wilford. Desert Roads Lead to Discovery in Egypt. The New York Times, September 6, 2010.2019−06−30

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