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吾喰楽家の食卓

国立演芸場九月上席(本編) 

2017年09月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

落語に限らないが、人気と実力は必ずしも一致しない。
噺家の場合、上手か下手の判断基準は、一定のレベルを超えれば、話芸の技量よりは、客の好みの問題だと思っている。
私が好きな噺家の中で、チケットが取り難いトップは、柳家小三治だ。
国立演芸場では、新春と七月の名人会に出演するのが恒例になっている。
今まで、一昨年が七月、昨年と今年は新春、合計で三回観ている。
最近で云えば、本年七月の名人会は、発売を開始してから十数秒で売切れ、観ることが出来なかった。

今回の公演に、トリを務める昔昔亭桃太郎を含め、お目当ての噺家はいなかった。
後で判ったことだが、桃太郎の九月上席は、恒例らしい。
記録を調べたら、昨年と一昨年は、この公演を観ていない。
新作落語よりは古典落語が好きというのが、観なかった理由だろう。
今月は、花形演芸会と国立名人会へ行けないので、上席と中席を、初日に観ることにした。
桃太郎は、弟子である桃之助の真打昇進披露公演で観ているので、今回で二回目になる。

国立演芸場の座席は、丁度、三百席ある。
ところが、ざっと数えると、七十人程しか客がいない。
結構、落語好きが多いようで、人数の割には盛り上がった。
演題は、桃太郎の新作を除けば、全て知っている噺ばかりだった。
と云っても、退屈した訳ではない。
初めて観る、中入りの三遊亭笑遊と、ヒザ前の春風亭柳好が印象に残った。

笑遊は、お馴染みの古典落語『片棒』を大熱演した。
三人いる息子の料簡を試そうと、親父の自分が死んだら、どんな葬式を出すか訊く噺である。
六十歳半ばを過ぎたというのに、熱演と云うよりは、大暴れしたが相応しい。
そして、今まで、国立演芸場で観て来た二百五十人を超える噺家の中で、一番、声が大きいかも知れない。
ここでは、六人の『片棒』を観たが、柳亭市馬が、一番、好きで、一番、上手いと思っている。
しかし、面白さだけで云えば、笑遊も負けていなかった。

柳好は、笑点の司会でお馴染みの昇太の弟弟子である。
古典落語『宮戸川』を、癖のない芸風で好演した。
宮戸川とは、浅草川の旧名で、今でいう隅田川のことだ。
現在、長い芝居噺の一部である、お花と半七の馴初めだけが、口演されることが多い。
だから、『宮戸川』という噺の、演題の謂われが分からない。
好きな噺家の一人である五街道雲助が、通しで口演することもあるそうで、機会があれば聴いてみたい。

トリの桃太郎が高座に上がると、少ない客の中から、「待ってました!」と、複数の掛け声が掛った。
演題の『歌謡曲を斬る』は、昔の歌謡曲を歌いながら、歌詞の矛盾を突くもので、落語と云うよりは、歌謡漫談と云ったほうが良いだろう。
桃太郎とは同年代だから、歌う殆どの歌を聞いたことがある。
歌自体は、程々に上手で、思った以上に楽しめた。
最初から、多くを期待していなかったので、お得感もあり、いい一日を過ごせた。
人気者ばかりを追わず、チケットの売行きが悪い公演を、積極的に観るのも良いかも知れない。
                      (敬称略)

   *****

写真
9月1日(金)の演題



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雪月花さんへ

吾喰楽さん

こんばんは。

仰せの通り、故柳昇の弟子です。
柳好は昇太の弟弟子と書いたので、桃太郎は昇太の兄弟子とすれば良かったですね。
要は、桃太郎、昇太、柳好は、兄弟弟子です。

ちなみに、桃太郎の前座名は昇太です。
ただし、前座名は代目に含めません。

2017/09/03 21:49:27

弟子

さん

昔昔亭桃太郎と
笑点の司会でお馴染みの昇太は
春風亭柳昇の 
弟子ではないでしょうか
違っていたらすみません

2017/09/03 21:30:45

とみちゃんくんさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

小三治師匠は、マクラが長いですね。
そして、それが面白い。
去年と今年の正月、マクラで鏡餅を取り上げました。
噺も同じ、『小言念仏』でした。
二年続けて、同じマクラと噺でしたが、それでも面白い。

2017/09/03 08:18:41

つゆさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

筋を知っていると、噺家の所作や個性を、余裕をもって楽しむことが出来ます。
同じ噺家の場合でも、その度に違いがあります。

歌舞伎の場合、演者は同じですが、二度目は新しい発見がありますよ。

2017/09/03 08:10:10

小三治師匠

さん

あの方の少しとぼけた間合いには魅力がありますね。独特の世界があります。ワンテンポずれた感じに言外の魅力を感じます。好きですね。

2017/09/03 08:07:42

同じ演目でも

さん

やはり、演じ方が違うのですね。
どの世界でも、そうだと言ってしまえば、当たり前かもしれませんが、
そこまで味わえるようになれば、鑑賞にますます深みが増しますね。

2017/09/03 08:04:22

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