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吾喰楽家の食卓

小三治の大惨事 

2017年01月08日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

前座が高座に上がると、メクリを指さし、簡単な自己紹介をすることが多い。
客に名前を覚えて貰いたいからだ。
今回、小三治師が同じことをしたので、客は笑った。
現役の噺家の中で、唯一の人間国宝である。
寄席に来る客で、彼を知らない人は滅多に居ない。
自己紹介をしたのが、受けを狙ってのことでないことは、マクラの続きを聞いて直ぐに判った。

小三治の名前は、真打に昇進したとき、師匠が付けてくれた。
名前に小の字が付いている噺家は、真打昇進を機に、それを外すことが多い。
それまで、さん治を名乗っていたのに、真打昇進で小の字が付いた。
師匠の命名だから、弟子としては受けるしかない。
何故、小の字を付けたのか、後で師匠に訊いたら、「大の字を付けてみろ。それこそ、大さん治(大惨事)だ」と、答えが返って来た。
ここまで、小三治師が云うと、どっと、客が笑ったのは、云うまでもない。

小三治師は、話題を替えた。
七草の日に因み、その名前を云い始めたが、「セリ、ナズナ・・・」で、後が続かない。
高座の上手に飾ってある大きな鏡餅を指さし、「立派だ」と、褒めて話を逸らせた。
昨年の新春国立名人会のマクラも、鏡餅だったので、知っているエピソードが多かった。
毎年、新宿末廣亭から鏡餅が届く、海老飾りを付けるのが大変、カビの対策が必要、寄席の鏡餅は本物の伊勢海老など、鏡餅に関わる話題が続いた。

今回、小三治師の持ち時間は、二十分である。
国立演芸場のトリとしては、異例の短さだ。
色物を含めると十人(組)も出演するのだから、やむを得ないことではある。
マクラが長いので、時計を見たら、二十分を過ぎていた。
この後、師は浅草演芸ホールと鈴本演芸場へも行く。
他人事ながら心配していたら、程なく噺に入った。

演題は、昨年の新春と同じ、『小言念仏』である。
小言を云いながら、仏壇に経を上げる噺だ。
内容が、前回とは少し違う。
経を何処で止めても大丈夫な噺だから、時間の調整はし易い。
それでも、二十分近く、時間は延びてしまった。
四十分を感じさせない、至福の時間だった。

   *****

1月7日(土)の演題と二階ロビーの鏡餅



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