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吾喰楽家の食卓

音羽屋の三人 

2017年01月07日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

新春の国立劇場の公演は、『しらぬい譚』である。
江戸時代末期から明治時代初期にかけて刊行され、江戸庶民に愛された長編小説『白縫譚』(しらぬいものがたり)を元に作られた、新作歌舞伎だ。
菊地家に滅ぼされた大友家の息女若菜姫が、お家騒動に付け込み、家の再興を目論む。
蜘蛛の妖術を使う若菜姫(菊之助)と、菊地家の忠臣親子(菊五郎・松緑)との攻防が、面白い。

菊之助は姫だけでなく、海女、若衆、小唄師匠と様々に姿を変えて登場したが、何れも色気があるのは流石だ。
今回、彼は宙乗りに初めて挑戦したらしいが、客席の上を泳ぐように移動するのは、見応えがあった。
一回目は、舞台下手から客席を筋交いに三階へ上って、退場した。
二回目は、三階からスッポンまで下り、ワイヤーを外し、舞台で演技を続けた。
やはり、菊之助は素晴らしく、次世代の歌舞伎界を担う役者の一人だと、再認識させられた。

松緑が演じる菊地家の執権の倅・鳥山秋作も、豪傑らしい大立廻りを見せてくれた。
スッポンの周辺で、十二匹の化猫との立廻りは、見事というしかない。
目の前で演じられたから、尚更である。
勿論、化猫を演じた十二人の役者の頑張りがあってのことだ。
また、ドブで感じる“飛び六方”の迫力は、未経験のものだった。

残念な点もある。
仮名手本忠臣蔵では熱演した、菊五郎のことだ。
歌舞伎では、衣裳の脱着や小道具の受け渡しなどの為に、度々、黒衣(くろご)が出て来る。
二幕目で、菊五郎が演じる、菊地家の執権・鳥山豊後之助が登場した。
黒衣が出て来て、小さな黒い箱に菊五郎を座らせた。
その後、這いつくばったままで、側を離れない。
その内、胸元から白い紙を取り出した。
多分、正面からは見えないはずだ。
黒衣は、科白を教えていた。
人間国宝の菊五郎だから、決して棒読みではない。
とはいえ、科白には、いつもの迫力が感じられない。
力のない、長い科白が続いた。

   *****

写真
1月5日(木)、国立劇場の玄関と、ロビーの富司純子さん



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シシーマニアさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

そうですか。
高校の同級生で、同じタイプが居ました。
一浪して、東大に入りました。

噺家の円丈は、自分で作った新作落語の『新寿限無』を口演するのに、カンニングペーパーを使いました。
年を重ねると共に、記憶力が衰えたとか。
菊五郎も、同じなのでしょうか。

2017/01/08 05:56:37

贔屓の悩み

シシーマニアさん

そうでしたか・・。

粋な菊五郎は、他人に努力しているところを見せない、と聞いた事があって、さぞ大変だろうなと思っていました。

「自分は不器用だから」と公言して努力する方が、ずっと楽ですよね。

でも、一生懸命科白を憶えている菊五郎は、見たくないですし・・。

悩みますね。

2017/01/07 23:30:05

パトラッシュさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

実は、馬桜師も『師走初演の会』で『九段目』を口演しましたが、カンニングペーパーを使いました。
本人は、リベンジを誓っていたが。

すでに、千穐楽のチケットは確保してあります。
三階最後列中央です。
菊之助の宙乗りと、松緑の立廻りに加え、菊五郎の科白を注視します。

2017/01/07 09:34:16

「三日御定法」

パトラッシュさん

初日から三日目くらいまでは、役者のトチリも大目に見よう。
という、寛大な慣習です。
昔はともかく、現代の観客が、これを大らかに、受け入れるかどうかは、疑問です。
安くない入場料を払い、未完成の芝居を、見せられるわけですから。
馬桜師辺りは、その劇評において、苦言を呈するかもしれません。
噺家だったら、そんな甘えは許されませんと。

吾喰楽さん、間の悪いことに、ちょうどその、三日目に当ったようですね。

役者も人の子、老化現象には、勝てないのかもしれません。
セリフ覚えは、さぞ悪くなっていることでしょう。
とはいっても、時間は十分にあったはず。
事前に稽古を、しっかり積んでよと、こう言いたくなるのも、当然です。
若手だったら、さぞ責められることでしょう。
つまりは、大看板ならではの、傲りがあるのかもしれません。

口直しに、千穐楽で、もう一度……というのは、いかがでしょうか。

2017/01/07 07:47:02

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