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2014年12月26日 外部ブログ記事
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選択する未来(Ⅱ)                  
 
前回、増田・日本創成会議座長(前総務大臣)の著書「地方消滅」についてこのコラムに書かせていただきました。同著でも、求められる国家戦略、人口急減社会への処方箋がある程度は触れられています。今回と次回「選択する未来Ⅲ」では、独断と偏見で我が国が超高齢社会を乗り超え、明るい未来を展望できるための「私案」を示させていただきます。これまで幾度かに亘り、地方再生プランが語られてきました。しかし、処方箋の方向が間違っていれば、これまで同様に「地方再生」の名目で箱もの公共投資を繰り返し、我々に残された貴重な持ち時間を無為に使い切ってしまうかも知れません。
 
人口急減社会の現実は短期的には如何ともしがたい人口動態です。我が国の活力ある未来を描くとき、多子化政策や、外国人労働力の活用、定年制の廃止と生涯現役社会の実現は避けて通れない重要な政策課題です。特に、少子化対策と女性が仕事と育児を両立さえるためには同一労働・同一賃金、労働時間の短縮、男女ともに育児休暇の取得等、西欧先進国で日常的に行われている労働慣習を我が国にも取り入れる必要があります。現状、日本の労働市場では女性の労働参加率が低く、今後女性が活躍の場を広げることにより生産年齢人口の減少にある程度歯止めをかけることが可能です。これらの問題は重要で、本質的な議論ではありますが、今回は議論の拡散を防ぐため別の論考に委ね、敢えてこれ以上触れません。
 
増田リポートの処方箋の中核議論は人口の東京一極集中の構図是正にあり、特に少子化対策のためには人口の再生産力とも言われる20-39歳の女性の大都会への人口移動を抑え、子供を産み、育てる環境に恵まれた地方の環境整備を図るというものです。確かにこの方向観は正しく、政府も地方再生議論の中で、新たな地方進出企業や地方企業での新規学卒採用向けに法人税優遇策等の検討が始まりました。また、アベノミクスの円安効果で、製造業の海外シフトにも歯止めがかかり、企業がこれからの新規投資を国内に向け始めたのは地方で雇用機会が増加する観点から望ましいことです。同時に、過疎地域、限界集落が増加する中で、自治体は公共交通機関の集積する地域でコンパクトシティー化を図ることも重要になってきます。
 
処で、先般の衆議院選挙の争点の一つが「アベノミクスの是非」にありました。自民党が「アベノミクスこの道しかない」と連呼し、野党は「所得格差を生み出すアベノミクスはストップ」と有権者に語り掛ける図式は、私には事実認識に於いて双方とも誤解しているとしか思えませんでした。所得格差の原因は何も我が国に限ったことではありません。ベルリンの壁の崩壊とともにヨーロッパでは旧コメコン地域が市場経済に参入し、中国やその他のアジア諸国が低賃金を背景に大量生産商品の工場となり、経済のグローバル化が一挙に加速したことが世界中で所得格差が急拡大した歴史的背景です。例えば、10財閥が経済の75%のGNPを占めるといわれるお隣の韓国が所得格差という点で最も深刻な例と言えます。
 
企業内に余剰人員を抱え、労働市場が雇用者側に有利な状況で、「非正規雇用の増化」は確かに企業が製造原価を切り詰め、生き残りのため、労働コストを少しでも抑えたいとの経営意思を反映しています。しかしながら、正規雇用、非正規雇用等の形態に問題の本質があるのではなく、同一労働・同一賃金という当然の原則・考え方が、日本では受け入れられていない点こそが問題なのです。他国では現在見られない労働市場の慣習、男女賃金格差、定年制度等が我が国では当然のこととして抜鈎しています。我が国における今後の労働市場の需給を考えるとこれらの考え方も徐々に変化してくるものと思います。
 
現実は、「団塊の世代」が2012−14年に65歳を迎え定年退職することになり、今後生産年人口が増加することはありません。既に日本の労働市場の需給は大きく変化しつつあり、特に労働集約的なサービス産業においては人材確保が出来ず廃業に追い込まれる企業さえ出てくる始末です。今後の労働市場の逼迫を見通して、優秀な人材確保に躍起になる大企業はそろって非正規雇用を正規雇用にシフトをしています。中小企業に於いても今や従業員の確保は死活にかかわり、多くの飲食チェーン店を経営する企業では雇用の確保が出来ないことから、店舗の縮小が検討されています。政治家が実質賃金の引き上げを喧伝するまでもなく、市場の需給関係から平均的賃金は大幅に増加することは間違いありません。
 
問題はグローバル化した自由主義経済下にあって、各国でグローバル企業(世界中の競争相手と競争環境にある企業)とローカル企業(サービス産業を中心にした地域密着型企業)に分化しており、相互の関連が無くなりつつあることです。日本でもその昔は多くの中小企業は大企業の下請けで、大企業がグローバル市場の中で競争する過程で、その一端を担ってきました。ところが汎用品を低価格で大企業の下請けとして提供する中小企業の多くは、大企業が海外生産シフトを進める中で海外企業に置き換えられてきました。高い技術に裏付けされた先端部品を供給する能力のある中小企業は世界市場で大きなシェアを確保し生き残ることが出来ています。勿論、企業規模に関わりなく、グローバル市場で生き残ることの出来る企業は内外で優秀な人材を集め、給与レベルは当然ながらローカル企業で支払われる水準をはるかに超えるものです。
 
要は、戦いの市場が世界にある企業はますますグローバル競争の原理・原則の下で競争し、生き残ることが出来るのは高付加価値企業で、高い利益率と高い給与を支払うことが可能です。残念なことに日本のグローバル企業はこの20年間余り、競争優位にはありません。世界のGNPの中に占める日本の比率、フォーチュン500社の中に占める日本企業の数の低下などを見ると明らかです。日本の企業がグローバル市場で生き残るためには合併や統合により企業競争力を増すと同時に、国家として税制や企業インフラの整備が必要です。一方、ローカル企業は労働市場やマーケットの制約から競争環境は弱く、放置すると社会的存在価値の少ない企業を市場の中に温存する危険があります。日本では多くの中小企業が法人所得税を払っていません。また、中小企業保護の観点から税金を財源に無駄な政策金融がまかり通っています。日本の中小企業の生産性が低いのは広く知られており、マクロ的には資源の無駄遣いで今後の是正策が待たれます。
 
さて、我が国の産業構造を見ると、GNPや雇用者数でみても、グローバル経済圏(企業規模ではない)で活動する企業が30%、比較的競争環境の弱い、ローカル経済圏の企業が70%です。また、GNPの中でサービス産業の比率も約70%となっています。この二つの経済圏は相互に依存関係のない全く異なった仕組みです。グローバル企業の競争については既に触れましたので、ローカル企業について考えてみたいと思います。限られた経済資源(人的資源)の有効活用の観点からは、競争環境の比較的弱いローカル企業の生産性を国際水準並みに上げ、ここでの所得を上昇させることが重要です。特にローカル経済圏は第一次産業を除くと、非製造業が中心で本質的に「コト」産業です。具体的には、交通機関、物流、飲食、小売り、宿泊施設、医療、介護、教育等のサービス産業が中心で、対面サービスの提供と生産・消費が同一の場で行われる不完全競争の世界です。それだけに生産性が低いにも拘らず、市場での競争の結果排除されないのです。
 
これらの弊害を取り除くには、同一業態の企業が地域をまたがりベスト・プラクティスの手法で生産性を上げ、少しでも競争原理を働かせる、また、地方の金融機関が中心になり、自らの存続のためにも、社会的存在価値のない企業を整理倒産させる仕組みが必要です。地方では労働市場の環境は一段と厳しくなっていますので、低賃金で労働させるブラック企業が自然淘汰されるメカニズムを作り出すことが望まれます。いま日本では「地方再生」が経済政策のキーワードになってきています。特に四季折々の自然が豊富で、温泉や、食が注目されている折から、観光業の未来には明るいものがあります。特に、オリンピックに向けて増加する海外観光客にとっては、円安と、歴史や固有の伝統文化溢れる日本は魅力にあふれています。特産物、美しい自然に恵まれた田舎・地方には観光を中心にした再生の大きなチャンスが存在します。いまこそ各自治体は自分たちの強みを生かした再生の仕組みと、高品質なサービス提供による生産性の向上努力を惜しむべきではありません。
 
後半部分の論旨には「なぜローカル経済から日本は甦るのか」―GとLの経済成長戦略―富山和彦 PHP新書 から一部引用させて頂きました。
次回は「選択する未来Ⅲ」では曲がり角にある日本の再生のための選択肢(教育、政治、自立、税制、市民社会等)について考えてみたいと思います。

 この夏フランス・ブザンソンで歓待を受けたミエさんがクロエちゃんを連れ、我が家の近くに住むお姉さんとナッチャンと一緒に、我が家を訪ねてくれました。楽しい昼食の一時でした。年末年始のブログは当面フェースブックで書かせていただきます。どうぞ皆様、よいお正月をお迎えください。日々是好日。

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